研究課題/領域番号 |
23540429
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
竹端 寛治 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (50354361)
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キーワード | グラフェン / サイクロトロン共鳴測定 / 強磁場 / 磁気光学分光測定 |
研究概要 |
平成24年度には前年度に引き続き、本研究の主目的である強磁場中磁気光学分光装置、特に検出器部分の改良に取り組んだ。これは検出効率の大幅な向上を目指し検出器部分をサンプル直下である強磁場極低温空間に移設するものである。前年度は空間的な制約が厳しいことに加え、ノイズ低減のためボロメータ素子直近にFETを設置しようとしたためボロメータ素子が十分に冷却できず試作段階で設計上困難と判断した。今年度はその結果を踏まえ、強磁場極低温試料空間で使用するボロメータユニットにはノイズ低減のためFETを組み込まず、そこから得られる信号を室温空間に設置する低ノイズプリアンプにより増幅するように設計を変更した。今回、強磁場磁気光学分光プローブに設置可能なボロメータ素子を磁場中試料空間に設置可能なユニットに組み込むことに成功し、低温での遠赤外光線検出動作確認まで行った。今後は強磁場磁気光学分光プローブにボロメータユニットを設置し、強磁場マグネット内での動作確認、磁場引加の影響評価、更に強磁場中での実際の磁気光学分光測定を試みる予定である。 また、昨年度に引き続き、CVD法生成グラフェンは任意の基板に転写が容易であることを利用し既存の強磁場中磁気光学分光装置を用いてCVD法生成単層グラフェンのサイクロトロン共鳴吸収の基板依存性を測定し、その結果、GaAs基板上の試料などではグラファイトにおけるディラックフェルミオンのフェルミ速度から大きくずれるなどの知見を得ている。サンプルの品質を評価するため、レーザーリソグラフィ法および反応性イオンエッチングを用い、ホールバーに成形し輸送現象特性を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主目的である強磁場中磁気光学分光装置の検出器部分の改良を行うことで、物質・材料研究機構の強磁場施設を用いた強磁場下における精密な磁気光学分光測定可能にしを詳細なグラフェンのサイクロトロン共鳴測定を目指している。しかし、特に検出器部分の改良に関しては空間的な制約が厳しいことや強磁場極低温での動作が必要なことから技術的困難を伴う挑戦的な課題であり、実際に当初計画していた構造ではボロメータユニットの冷却が不十分になるためボロメータユニットの構造の再検討が必要になるなど当初の研究計画よりやや遅れが生じている。ただ、今年度はボロメータユニットの基本的な動作確認が終了したことにより、最終年度である次年度には強磁場中磁気光学分光装置の改良を完成させ、改良された測定装置を用いた詳細なサイクロトロン共鳴吸収測定を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、磁気光学分光装置における特に検出器部分の改良が技術的困難により設計変更を行うなど当初研究計画に比べ遅れが生じているが解決の方策は立っており、最終年度である平成25年度において磁気光学分光装置の測定プローブ改良を完成させると共に、強磁場極低温環境下における動作確認、更に磁場引加の影響を評価し、その影響を差し引くことで試料のスペクトルを算出する測定技術の確立を早急に行う。その後、改良された測定装置を用い単層グラフェン試料の詳細なサイクロトロン共鳴吸収測定を行う予定である。 また、これまでのCVDグラフェン試料のサイクロトロン共鳴測定から試料の質的なばらつきが研究を推進する上で問題になっている。輸送現象測定などの手段で試料を評価した結果、一部のCDVグラフェン試料は非常に高いホール濃度を示すが真空中アニールによりホール濃度を著しく減少させ移動度も大幅に向上させることが確認された。これは真空中アニール処理を行うことで、サイクロトロン共鳴観測により適した試料条件が実現できる可能性を示唆している。今後、CDVグラフェン試料の真空中アニール処理を行えるよう磁気光学分光装置測定プローブの改良を検討し、より詳細な測定が行えるように努力する。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度である次年度においては、強磁場磁気分光測定用プローブの作製や極低温強磁場において使用するボロメータユニットの製作・改良、予備のボロメータ素子などの購入を行う予定にしている。消耗品購入としては遠赤外線光源である高圧水銀灯や温度構成済みセルノックス温度計(1.6K~300K)、真空部品などを予定している。また、研究成果発表を行うため国際会議参加費用および外国旅費を予定している。
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