研究課題/領域番号 |
23540431
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
長壁 豊隆 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (80354900)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高圧力 / 中性子回折 / 電気抵抗 / 磁性 / 伝導 / 強相関電子系 / 臨界領域 |
研究概要 |
本研究では、Ceモノプニクタイド、Pr充填スクッテルダイト化合物、正方晶層状化合物などの良く知られた強相関4f電子系化合物において、スピンや軌道などの自由度が競合する臨界領域を低温高圧力下で生成し、この領域で発現が期待される新奇物性を、中性子回折と電気抵抗の同時測定法により磁性と伝導の視点から研究する。この目的のため、まず、10 GPa級の超高圧力下および低温下において単結晶中性子磁気回折と電気抵抗を同時に精密に測定する技術の開発を行うことが大きな目標となる。 平成23年度は、まず、既存のハイブリッドアンビル式高圧力発生装置を用いて高圧力下で電気抵抗を測定する技術の確立を目指した。具体的には、電気抵抗を測定するためのリード線を、高圧力装置に封入できるサイズの微小試料に固定するためのマイクロスポット溶接機を新たに製作した。これにより、高圧力発生装置内ではないが、1mm程度のPrFe4P12単結晶試料に4端子を固定することができるようになった。また、低温下で圧力値を読むためのルビー蛍光測定システムを構築した。さらに、現在、電気抵抗を測定するための測定プログラムをLabViewにより構築中である。一方、アンビル式高圧力発生装置を用いて電気抵抗を測定する場合、抵抗測定用のリード線と金属ガスケット(アルミ合金)との間の絶縁方法が重要になる。現在、エポキシ系接着剤で固めたアルミナ粉を絶縁膜として試しているが、高圧力下で完全な絶縁状態を得る事ができていない。これについては次年度以降に新たな絶縁方法を試す予定である。また、本研究の同時測定で使用する予定の中性子回折装置について、震災からの復旧、および同時測定のための整備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、研究用原子炉JRR-3に設置された中性子回折装置を使用する計画となっている。平成23年3月11日に発生した東日本大震災によるJRR-3に対する直接的、及び間接的な影響が予想より長期間に及んでいるため、当初予定されていたJRR-3の再起動時期が未定となり、停止期間が最短であったとしても再起動は平成24年度の秋以降となる。そのため、研究の目的に記載した中性子回折と電気抵抗の同時測定の実現が、現時点では困難な状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
技術開発を継続して行い、10GPa級の高圧力下、及び1K程度の低温下でアンビル式高圧発生装置を用いて電気抵抗を測定する技術を確立する。そのためには、抵抗測定用のリード線とアルミ合金ガスケットとの間の絶縁方法を改善する必要がある。現在、エポキシ系接着剤で固めたアルミナ粉を絶縁材として試しているが、完全ではない。新たな方法として、アルミ合金ガスケットにアルマイト処理を行ってアルミナ層を生成する手法で絶縁を試みる。絶縁方法を確立できた後、まず最初に、平成25年度に実施する予定であったPrFe4P12について低温高圧力下での電気抵抗測定を試みる。この物質は、高圧力下で金属-絶縁体転移を引き起こすことが知られており、電気抵抗値の変化が大きいために試験測定に向いているためである。JRR-3が再稼働した場合は、同物質について、電気抵抗と中性子磁気回折の同時測定を実施し、臨界圧力以上で現れる反強磁性相の安定性と伝導の関係を調べる。さらに、Ceモノプニクタイドに関して、同時測定技術を駆使し、強磁性の圧力変化を追いかけ、それが消失する近傍の圧力下で電気抵抗測定を行い、超伝導の探索を行う。本研究の同時測定においては、使用する中性子回折装置の制御装置に電気抵抗測定システムをリンクする必要があり、現時点ではJRR-3の中性子回折装置を使用することを念頭に準備を進めているが、仮に本研究期間中にJRR-3が再稼働しない事が明らかとなった場合、現在、J-PARCにおいてコミッショニング中である微小単結晶中性子回折装置SENJUを使用することを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、アンビルセルを用いた高圧力下電気抵抗測定技術の開発に必要な消耗品を購入する。主に、アンビル一式、ガスケット材、高圧セル部品、リード線(金線)、金ペースト等となる。また、高圧実験の際に圧力を読み取るために必要な可搬型の小型分光器を1台導入する。JRR-3の稼働状況に依存するが、平成24年度に稼働した場合は、計2~3回の同時測定実験を予定しているので、液体Heが200リットル程度必要となる。さらに、国際学会1件、国内学会2件程度の参加を予定しており、これらに参加するための旅費が必要となる。平成25年度は、平成24年度の研究を継続する。計4~5回の実験を予定しているので、液体Heが300リットル程度必要となる。また、高圧力セルや電気抵抗測定用の消耗品を購入する。さらに、国内学会2件程度の参加を予定しているので、そのための旅費が必要となる。
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