タンパク質は化学反応のエネルギーを利用するナノマシンであり、動作原理は非平衡系の熱力学に沿って理解すべきである。本研究では動作原理理解の第一歩として、非平衡定常系の熱力学第二法則に相当する不等式を導出した。非平衡系の第二法則は、平衡熱力学と非平衡輸送の金字塔である最小仕事の原理と (線形)応答関係式を内包するという示唆に富む結果を得た。次にこの結果を応用し、ナノマシンを操作して誘起される輸送量(ポンピング)と非平衡仕事を結ぶ新しい関係式を発見した。観測可能量だけで構成され、ポンピングの実験研究に利用可能である。また、非定常系にも定常系と同様の熱力学構造の存在を予見させる関係式の導出も行った。
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