研究課題/領域番号 |
23540437
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
御領 潤 弘前大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (70365013)
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キーワード | トポロジー / 絶縁体 / 超伝導 |
研究概要 |
本研究課題は凝縮系電子論におけるトポロジカルな状態について議論する事が目的である。この目的にのっとり、現在はトポロジカルな超伝導状態が実現している可能性が高いSrPtAsについて研究している。この物質はヒ素化合物の超伝導体であるが、鉄系超伝導体と大きく異なる点は結晶がヘキサゴナルな構造を持つ点にある。これまであまり実験的な研究が行われておらず未知な部分の多い超伝導体である。そこで我々はこの超伝導体の波動関数の対称性について群論的分類を行った。そして一般的なモデルを解析し、どのような対称性をもつ波動関数が安定化されやすい傾向にあるかを詳細に議論した。その結果、異方的な対称性をもつ状態としてA2u状態やEg状態があらわれやすい傾向にあることを突き止めた。この傾向は結晶のヘキサゴナルな構造と密接な関連がある。さらに興味深い点は、A2u状態もEg状態もトポロジカルに非自明な構造をもち試料境界に束縛された表面状態をサポートする点である。 これと並行しトポロジカル絶縁体におけるクーペロン凝縮に関して研究している。トポロジカル絶縁体では電子の波動関数が運動量空間において非自明なトポロジー的構造を持ち、バルクは絶縁体的であるがエッジや表面ではバリスティックな伝導性を持つ点が顕著な特徴である。申請者は半導体や絶縁体に対して強い電子間引力相互作用を導入した場合に発生するクーペロン(2電子束縛状態. P. Nozieres and F. Pistolesi: Eur. Phys. J. B 10 (1999) 649) の凝縮による超伝導状態が、トポロジカル絶縁体の場合にはどのような対称性を持ち得るかについて具体的に蜂の巣格子上の Kane-Mele 模型を用いて調べている。すなわち、絶縁状態のトポロジカルな秩序が Cooperon 凝縮状態にどのような影響を与えるか系統的に調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トポロジカル超伝導体や絶縁体に関する議論を一般的かつ具体的に展開中であり、本研究課題の「トポロジカルな電子状態を包括的に議論する」という目標にそっておおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
SrPtAsの超伝導体に関して、最近になり時間反転対称性の破れが観測されたという報告がミューオンスピン緩和時間の測定よりなされた。さきに述べた、トポロジカルに非自明な超伝導状態(EgおよびA2u状態)から、時間反転対称性の破れを説明することを試みて行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内外の学会・研究会や研究交流のための旅費に用いる。他の研究機関の研究者のセミナー招聘のための旅費・謝金に用いる。計算機環境の整備に用いる。文献購入に用いる。
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