研究課題
本研究の目的は、「埋め立て法」や「Walker法」に代表される独創的な幾何学的手法をさらに発展させることにより、モンテカルロ法の収束を劇的に改善する方法を見出し、それらの新しい手法をランダムスピン系の統計力学に応用し、さらに、新しいアルゴリズムに基づくソフトウェアの整備・公開することにある。我々の「埋め立て法」では、1)詳細釣り合いを明示的に破り、2)棄却率を最小化する。さらにこれを拡張し、詳細釣り合いを満たしつつも棄却率を最小化するアルゴリズムも開発している。この方法は、ポッツ模型の局所更新法に用いた場合、従来の埋め立て法と同程度に有効であることが示されている。このアルゴリズムは、ダイナミクスなど詳細釣り合いの有無が影響する場合に特に有用である。また、「埋め立て法」の連続系への応用を行った。従来の熱浴法を拡張するだけでなく、分子動力学法を用いたハイブリッド法を組み合わせることにより、従来の方法に比べ、数倍~10倍程度効率良くサンプリングが行えることを示した。他にも、量子モンテカルロ法によるエネルギーギャップの精密測定法、量子モンテカルロ法により求めたエネルギー準位の交差により相転移点を精度よく求める「量子モンテカルロレベルスペクトロスコピー法」の開発とスピンパイエルス系の相転移への応用、トポロジカルな秩序変数として期待されている局所Z2ベリー位相の量子モンテカルロによる測定法の開発、相互作用の非等方性が強い系に対する有効な有限サイズスケーリング法の開発と非等方性起源の有限サイズスケーリングへの強い補正の起源の解明などを行っている。さらに、「埋め立て法」のための汎用ライブラリBCL (Balance Condition Library)を開発し、インターネット上で公開した。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に挙げた、アルゴリズム開発、それにもとづくプログラム開発と公開、さらにそれを用いた量子スピン系の研究が平行しておおむね順調に進んでいる。
平成24年度の研究を継続するのと同平行して、既存のモンテカルロ法との組み合わせ手法の探求とその効果の検証(長距離相互作用系におけるO(N)法との組み合わせ、拡張アンサンブル法との組み合わせ、波数空間・周波数空間での直接モンテカルロ法の開発)を進める。また、汎用ライブラリBCLの機能拡張、ドキュメント整備も進めていく。
主として、他の研究者との情報交換・研究打合せ・成果発表のための出張旅費、およびプログラム開発・資料整理に対する謝金、その他消耗品に研究費を使用する計画である。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 3件)
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