研究課題/領域番号 |
23540441
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
丸山 健二 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (40240767)
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キーワード | 液体の構造変化 / X線・中性子線散乱 / 液体セレン / 液体水銀 / 逆モンテカルロ法 |
研究概要 |
液体カルコゲンの高温高圧下での構造変化を調べるために、SPring8のBL28B2ビームラインを用いX線散乱測定を行った。すでに数回の測定を行ってきたが、これまでは半導体―金属転移の領域までの測定を実行できていなかった。今回、試料周りの条件を検討しなおして測定を行うことにより、初めて液体セレンが金属化する領域(1600℃、1600bar)での測定に成功した。また、構造データの解析も順調に進み良好な構造因子S(Q)を得ることが出来た。この結果を用いて液体Seの構造変化の詳細を解析できれば、液体の相転移の引き起こす構造変化について実験の面からの寄与は非常に大きい。なお、得られたS(Q)には低Q領域において相転移と関わりのあると考えられる変化が見られるのでここに着目して構造解析を進めている。 このような液体のX線や中性子線散乱から得られる構造データを解析し構造モデルを構築するために逆モンテカルロ(RMC)法を用いるとともに改良を行っている。特に液体セレンのような共有結合を有する系へのRMC法の適用は困難であったのでこのような系にも適用できる方法をいくつか提案してきた、本年度には各原子周りの環境を一様になるように制限し出来るだけ鎖構造を保つような方法を開発した。その結果、主に鎖からなる液体Seの構造モデルを構築することが出来た。この結果は液体カルコゲンに詳しい研究者に受け入れられるものであった。また、ハンガリーで開催されたRMCに関する国際会議にて発表し、高く評価された。 液体水銀の構造変化に関しては、これまで構造単位と考えてきたHg4四面体同士の連結状態に関して詳しく解析を行った。この新しい解析法により構造変化に伴う局所的な構造変化を具体的に表現できるようになった。 以上のように液体の構造変化を局所から中距離に及ぶスケールで解析する方法を開発できており構造研究に寄与し続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高温高圧下のカルコゲンの構造変化について、SPring8におけるX線散乱測定を行い、実験条件を改良することにより、半導体―金属転移を生じる領域まで構造情報を得ることが出来た。これにより目的としていた測定データを得ることが出来た。 同時に、液体カルコゲンの構造モデルを得るための逆モンテカルロ法の改良に取り組み成果を上げつつある。この手法については逆モンテカルロ法に関する国際会議にて口頭発表を行い高い評価を得ることが出来た。 また、流体水銀の構造解析についてはこれまで構造単位であるHg4四面体を中心に考えてきたが、中距離の構造変化を考えるために新しく四面体同士の連結状態についても解析を加えた、このことにより密度低下に伴う局所構造の変化をより明瞭に説明できるようになり、所期の目的を達しつつある。 このほか、電子状態の変化を量子計算により確認する方法を開発しつつあり、当初の目的をより信頼性良く達成できる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
液体カルコゲンや水銀の構造モデルの構築に目処が立ったので、液体の相転移と構造変化のかかわりについて研究を進めていく予定である。そのために、液体カルコゲンについては中距離構造を明らかにするために、voidを用いた構造解析をさらに進めていく。これまでは結晶における鎖や環構造とのかかわりを明確にしていなかったので、この語この点を詰めていくとともに鎖間や環の間の空間について考察し、voidを用いた解析法の有効性を確認する。また、液体カルコゲンの混合系についてこれまでに得られているX線散乱データに加えて中性子散乱データを得ることによりさらに信頼性の高い構造モデルの構築を進める計画である。 液体水銀についてはこれまでいくつかの構造モデルを提案している。これらの有効性を確認することが求められているので、モデルとして得られている構造単位について電子軌道計算と組み合わせ実際の金属―絶縁体転移との関係を明らかにしていくことを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
液体カルコゲンの混合系について中性子散乱データを得るために測定セル等の消耗品を購入する。 構造モデルを基にした電子状態を量子計算により明らかにするために、計算機環境を構築する。このための備品・消耗品を購入する。 不規則系の構造に関する国際会議への出席の旅費を支出する。 本研究課題の連携研究者・研究協力者との研究打ち合わせのための旅費を支出する。
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