研究課題
まず、前年度より、理化学研究所の上田博士研究員、および神戸大学の西野准教授と共同で行なってきた、2次元古典格子系における高次特異値分解を用いたテンソルくりこみ群の固定点の構造を明らかにした内容をとりまとめて、Physical Review B誌に掲載された。くりこみ変換を繰り返すごとにシステムサイズが増えるが、そのシステムサイズが系の相関長を超える程度になると、急速に固定点に収束するとともに、行列のランク落ちが起こる。ランク落ちした行列が固定点を記述することになるが、この固定点を記述する密度行列のスペクトルが、対応する角転送行列のスペクトルの倍化により説明できることが分かった。さらに、同様のテンソルくりこみ群を1次元量子系のXXZ模型に対しても適用し、倍化現象が起こることを確認した。また、臨界点直上のスペクトルの振る舞いには、これまでに無い特異な指数で特徴づけられる分布が現れることが分かった。これらは、高次特異値分解型テンソルくりこみ群に特有の現象で、そのくりこみ群の背後にあるツリー型のテンソルネットワークに起因することが大きいと考えられることを論じた。一方、量子モンテカルロ法の負符号問題と呼ばれる本質的な困難が知られている。行列積状態のエンタングルメントの構造を調べていくにあたって、AKLT模型と呼ばれる基底状態のエンタングルメントの構造が厳密にわかっている基本モデルに対し、そのエンタングルメントを解く非局所変換が、実は量子モンテカルロ法の負符号を解消することを見出した。この結果は、今後の量子多体系のエンタングルメント研究に大きな発展をもたらす本研究の重要な結果であると考えられる。
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