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2012 年度 実施状況報告書

テンソルネットワーク変分法を用いた量子フラストレーション系の数値的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23540450
研究機関京都大学

研究代表者

原田 健自  京都大学, 情報学研究科, 助教 (80303882)

キーワードエンタングルメント繰り込み / テンソルネットワーク / 反強磁性ハイゼンベルグモデル / シャストリー・サザーランド格子 / 変分法 / プラケットダイマー相 / 磁化プラトー / コード開発フレームワーク
研究概要

MERAテンソルネットワークを用いた変分計算により,シャストリー・サザーランド(直交ダイマー)格子上の反強磁性ハイゼンベルグモデルの基底状態の数値的研究を行った.エンタングルメント繰り込みを取り入れる事で,熱力学極限の基底状態を精度よく求める事ができた.その結果,ダイマー内の相互作用定数をJ, ダイマー間の相互作用定数J'とした場合,J'/J=0.687(3)で直交ダイマー相からプラケットダイマー相への量子相転移があり,その後,J'/J=0.75でネール相への量子相転移があることがわかった.さらに,同じテンソルネットワークを用いて同モデルの磁化過程を調べた(テンソルネットワークは特にバイアスの少ない変分試行関数であるため,磁場を付加するなどにも柔軟に対応することができるメリットがある).我々の計算結果によれば,0.5 < J'/J < 0.69で1/2や1/3磁化プラトー等を確認できた.また,プラトー相間に,トリプレット励起で特徴付けられる結晶秩序と超流動性が共存した超固体相が存在する事も数値的に確認した.これらの結果に基づき,シャストリー・サザーランド格子モデルの磁場中の相図の全体を定量的に明らかにした.我々の結果は,定性的には先行した理論研究と一致しているが,テンソルネットワーク変分法を適用する事で,SrCu2(BO3)2等を含む領域まで定量的に研究を拡張できた点が新しい.
テンソルネットワーク変分法では,テンソルネットワークのテンソル縮約が基本的な計算タスクである.コード開発を行うに際しては,テンソル計算の部分は各種テンソルネットワークで共通化できるため,そのフレームワークの整備を行った.さらに,MERA特有のCausal coneと呼ばれるサブテンソルネットワークの計算を簡単に記述できるフレームワークを,前述のテンソル計算フレームワークの上に構築した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

テンソルネットワーク変分法をもちいることで,三角格子上の量子フラストレーション系に引き続き,計画対象としていたシャストリー・サザーランド格子モデルに対して,従来法では困難であった精度の数値的研究を行う事ができた.
テンソルネットワーク変分法のコード開発全般に有用なフレームワークの整備を行う事ができた.

今後の研究の推進方策

ローカルな秩序変数に基づく量子相の特徴付けではうまく表現できないトポロジカルな量子相をテンソルネットワークで取り扱う研究が進んできている.そのような相を特徴づける量としてトポロジカルエンタングルメントエントロピーがある.当初の研究計画で対象としていた正方格子J1-J2モデルでも,議論の対象となっていた中間相がトポロジカル相であることを強くサポートするような計算結果もいくつか得られている.MERAテンソルネットワークを用いて,このようなトポロジカル相の研究を進めて行く予定である.

次年度の研究費の使用計画

テンソルネットワークや量子フラストレーション系に関する国際および国内研究集会に複数回出席し,本研究の成果発表と研究に関する情報交換を進める.
テンソルネットワーク変分法のコード開発のためのフレームワーク整備を進める為に計算機と開発環境の整備を行う.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Numerical study of incommensurability of the spiral state on spin-1/2 spatially anisotropic triangular antiferromagnets using entanglement renormalization2012

    • 著者名/発表者名
      Kenji Harada
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 86 ページ: 184421

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.86.184421

    • 査読あり
  • [学会発表] Bayesian Inference in the Scaling Analysis of Critical Phenomena

    • 著者名/発表者名
      Kenji Harada
    • 学会等名
      International Workshop on Recent Developments of Studies on Phase Transitions 2012
    • 発表場所
      Tokyo, Japan
  • [学会発表] Tensor network method for fermionic system

    • 著者名/発表者名
      原田 健自
    • 学会等名
      CMSI 第1部会「新物質新量子相の基礎科学」 夏の学校
    • 発表場所
      山形
  • [学会発表] Numerical study of incommensurability of the spiral state on spin-1/2 spatially anisotropic triangular antiferromagnets using entanglement renormalization

    • 著者名/発表者名
      Kenji Harada
    • 学会等名
      Conference on Computational Physics (CCP2012) for Physics, Chemistry, Biology, Engineering and related academic fields and industrial applications
    • 発表場所
      Kobe, Japan
  • [学会発表] 多体問題におけるテンソルネットワーク法

    • 著者名/発表者名
      原田 健自
    • 学会等名
      京都大学 RIMS研究集会「次世代計算科学の基盤技術とその展開」
    • 発表場所
      京都
    • 招待講演
  • [学会発表] Numerical study of quantum frustrated magnets using entanglement renormalization

    • 著者名/発表者名
      Kenji Harada
    • 学会等名
      International Workshop on Cooperative Quantum Dynamics and Its Control (CQDC'12)
    • 発表場所
      Julich, Germany
    • 招待講演
  • [学会発表] テンソルネットワーク変分法の開発

    • 著者名/発表者名
      原田 健自
    • 学会等名
      物性研究所共同利用スーパーコンピュータ・計算物質科学研究センター(CCMS)・元素戦略プロジェクト 合同研究会「計算物性物理学の新展開」
    • 発表場所
      東京

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公開日: 2014-07-24  

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