研究課題/領域番号 |
23540452
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
狐崎 創 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (00301284)
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研究分担者 |
中原 明生 日本大学, 理工学部, 准教授 (60297778)
大信田 丈志 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50294343)
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キーワード | 乾燥破壊 / 亀裂成長速度 / 塑性変形 / ペーストの記憶効果 / レオロジー / 粉体の力学 / パターン形成 / 非線形動力学 |
研究概要 |
本研究は主に、1、亀裂成長における塑性変形の役割、2、記憶効果によって生じる物性の異方性、3、乾燥による亀裂生成過程とその条件、を解明することを目指している。初年度に1および2の実験や測定に使う引張圧縮試験機の導入が遅れたため、3の理論研究を先に行う方針に切り替え計画を進めた。 3に関しては、凝集力をもたない固体微粒からなるペーストで、通常の乾燥だけが起きる場合と破壊が先に生じる場合をタイプの異なる空気の侵入過程として統一的に捉えて破壊条件を考察した。初年度に非弾性格子上のインベージョンパーコレーションを提案し数値計算を行い、続く今年度は、散逸を考慮した上で自由エネルギーに対してGriffith理論と類似の考え方を適用し、この2タイプの転移が1つの無次元量で決まることを明らかにした。この理論は塑性を無視して熱平衡極限のみを扱っているものの、破壊条件の弾性率、不均一性、および粒子サイズに対する依存性を与えるものである。成果は国際会議等で報告し、Physical Review E に論文の掲載が決まった。 1,2に関しては試験機を用いた測定を開始した。既知の粘弾性材料によるテストを経て球面の治具による圧縮試験を行うことに決め、乾燥の各段階での各種ペーストを測定をした。さらに研究分担者とともに記憶効果によって生じると予想される乾燥後期の破壊特性の異方性を曲げ試験で検出することを試みた。一方、亀裂速度の測定は、澱粉ペーストの特徴である速い亀裂成長を捉えるために電気的な測定を工夫したが、十分な測定精度が得られなかったため、これまでの方法を組み合わせて電気的に破壊開始を検出してカメラで高速連写する方法を試験中である。 また、日印および日・ハンガリーの二国間共同研究のメンバーである外国人研究者の訪日に合わせて、研究分担者らと共催の形で、鳥取大学で研究会を行い互いに成果発表を行い議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画を変更して優先して進めた乾燥亀裂の生成に関する理論研究は、成果をまとめて論文にすることができたが、実験および測定に関しては引張圧縮試験機の初年度の導入の遅れを反映して、当初の予定よりやや進展が遅れている。そのため実験の成果をまとめる段階にはまだ至っていないが、24年度は物性測定と亀裂速度の測定方法の開発を、理論研究と平行して進めてきた。25年度はこれらの実験を集中して行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は実験および物性測定に重心を移して研究を進める。 乾燥時の亀裂形成はペーストがまだ流動性を完全に失っていないところで生じ、種類によって亀裂成長の速度が著しく異なることが、これまでの研究で示唆されている。年度前半は、まず澱粉ペーストについて亀裂成長速度の測定手法を確立し、同じ手法がマイクロガラスビーズにも適用できるかを確認する。特に成長速度が大きく測定が困難であった澱粉ペーストについて、亀裂速度の層厚や乾燥速度についての依存性を調べ、既に測定している他のペーストの結果と比較する。次に亀裂生成時の各ペーストの物性データを圧縮試験で得る。圧縮試験では降伏や緩和が確認されているが、測定データから物性値を得る方法は弾性率以外は十分に確立されていない。そこで、研究分担者所有のレオメータによる測定を参照しながら、降伏応力や緩和時間の解析法を検討する。これらの測定からペーストの物性と亀裂成長の関係をより定量的に議論する。 また、ペーストの記憶効果が乾燥後期の固体状態のペーストの弾性や破壊条件に異方性を与えるかを調べるため、研究分担者らとともに曲げ破壊試験を行う。ペーストが柔らかい状態では、通常の試験が困難な場合があるため必要に応じて新しい測定方法を検討する。 これらの実験と測定をした上で新しい数理モデルを構築し数値計算を行うことは、時間的な制約からおそらく困難であるが、定量的な理論モデルを作る基礎を固めたいと考えている。 本研究は分担者それぞれが進めているペーストの記憶効果に関するプロジェクト(代表者:中原)、およびミクロな立場から塑性流動の理論的解明をめざすプロジェクト(代表者:大信田)と相補的な関係にある。また24年度までの日印二国間共同研究や、継続中の日・ハンガリーの共同研究のメンバーを含め、各国の破壊の研究者ともさらに研究交流を図る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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