研究課題/領域番号 |
23540454
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高見 利也 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 准教授 (10270472)
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研究分担者 |
藤崎 弘士 日本医科大学, 医学部, 講師 (60573243)
下川 倫子 千葉大学, 先進科学センター, 特任助教 (80554419)
小林 泰三 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 学術研究員 (20467880)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 液滴の分裂 / 表面パターン形成 / 時間方向並列化 |
研究概要 |
本研究課題では、平成23年度は流体中を沈降する液滴の分裂現象と、二成分流体の表面パターン形成現象を研究対象としている。このうち、前者の液滴の分裂に関しては、実験担当により二次元、および、三次元での現象に関して詳細に測定を行い、分裂前後の液滴の沈降速度変化、分裂モードの分布などについてのデータを取得した。シミュレーション担当は、分裂現象を再現するための計算機シミュレーションを実施し、アダプティブメッシュを利用して高精度化を図った。後者の表面パターン形成現象に関しては、実験担当によりフラクタルパターンの出現とセルパターンの出現に関する境界条件を調べるため、実験条件を変えて繰り返し測定を行った。この結果、液体内に誘起される対流現象との関連が明らかになった。シミュレーション担当は、この現象を数値シミュレーションで再現するための手法として、粒子法的なアプローチと、動的メッシュを利用した数値流体力学的なアプローチに関して計算量等を検討し、これらのシミュレーション手法を利用した研究の有効性が明らかになった。本研究の目的は、これらの現象の詳細を明らかにするとともに、動力学を扱うためのマルチスケール数値計算手法を確立することである。マルチスケール担当とシミュレーション担当が共同で、このための検討を実施した。空間マルチスケール手法として、パスサンプリング手法と動的メッシュ法を検討し、時間マルチスケール手法として、パラリアル法(Parareal-in-Time法)による時間方向並列化計算の可能性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、液滴分裂現象、樹状フラクタル形成現象、コーヒードロップレットの運動現象など日常的に見られる興味深い現象に対して、その動力学の非線形性に注目して実験とシミュレーションから研究し、マルチスケール的な観点から現象を理解することであった。初年度は、研究実施計画に従って、液滴の分裂と表面パターン形成の双方について研究に着手し、既に数値データや測定データの取得を実施しており、次年度以降に実施する予定のマルチスケール解析のための基礎データの収集が予定通りに進んでいるという意味で、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、前年度の実験とシミュレーションによる研究を引き続き実施するとともに、これらの結果に対するマルチスケール解析を開始する。マルチスケール解析に関しては、タンパク質の運動や古典・量子結合系など様々な系に対して開発されて来た手法の導入を検討する。さらに、初年度に扱った現象に加えて、研究計画に従い、新たにコーヒードロップレットの運動現象の研究に着手する。研究の進め方は他の現象と同様で、実験的な測定、および、計算機シミュレーションにより、マルチスケール的な解析を実施するための基礎データの収集を開始する。計算機シミュレーションを実施するための設備は、研究代表者が所属する九州大学情報基盤研究開発センターに平成24年度中に導入される大規模並列クラスターを利用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者(下川)が年度途中の異動により研究費の使用を遅らせたため、当該分担者の研究費は主に平成24年度に使用することとなった。また、平成23年度に研究代表者が導入する予定だった計算機設備は、平成24年度中に導入を予定している。次年度の研究費の使用計画は、上記二点の設備導入に関する部分以外では変更はなく、これらに関しても、研究の進捗に影響がない範囲の変更である。また、平成25年度の研究計画についても、変更は考えていない。当初計画で次年度に使用する予定の研究費は、研究打ち合わせ、および、成果発表旅費として、予定通り利用する計画である。
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