研究課題/領域番号 |
23540454
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高見 利也 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 准教授 (10270472)
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研究分担者 |
藤崎 弘士 日本医科大学, 医学部, 准教授 (60573243)
下川 倫子 千葉大学, 先進科学センター, 特任助教 (80554419)
小林 泰三 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 学術研究員 (20467880)
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キーワード | 液滴の分裂 / 表面パターン / 逆DLAモデル / パスサンプリング |
研究概要 |
本年度の研究では、重力により沈降している液滴の分裂現象の解析と、樹状フラクタル形成現象の再現と定量的な解析に関連した研究を実施した。シミュレーション担当では、いくつかの方法で樹状フラクタル形成のシミュレーションを開始し、最終的にDiffusion Limited Aggregation (DLA)の考え方を応用した新しいパターン形成のモデルを提案した。また、これによりミルク表面のコーヒーパターンに似た樹状フラクタル図形が形成できることを示した。このランダムパターン形成モデルは、ちょうど従来のDLAモデルを裏返しにした形のもので、逆DLAと呼ぶべき形成過程であり、シミュレーションにより測定されるフラクタル次元1.95は、これまでに知られていないものである。実験担当では、これらのシミュレーション結果と定量的に比較可能なデータを、物質の粘度などを調整することにより様々なパラメータで取得し整理した。マルチスケール担当は、パスサンプリング法によるマルチスケールアプローチについて研究を進め、さらに、シミュレーション担当と共同で、本研究課題で扱うシミュレーションへの応用を見越して、時空間シミュレーション手法の実装技術に関する研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年の研究によって新たに逆DLAモデルを提出し、樹状フラクタル形成現象の原因の一端を明らかにすることができた。本研究は、シミュレーション的な解析を通して物理現象の背後にある論理を明らかにすることが目的であるため、対象としている3種類の現象のうち一つで、現象のメカニズムに関する理解が深まったことは、達成度の進展について非常に大きな貢献である。これだけでなく、定量的な解析のための実験データの蓄積も進んでいることから、本研究は当初の計画通り順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度として、研究のまとめを実施する。今年度までの研究成果をまとめて論文の形で公開することを中心に実施するとともに、新たにコーヒードロップレットのシミュレーションおよび実験を実施する。この実施にあたっては、これまでよりいっそう動力学的な観点からの解析を行うために、二成分流体の高精度シミュレーションと高速度カメラを利用した実験により、時系列データを取得し、これらを比較しながら精度の検証、および、現象のより深い理解を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度であることより、予定通り成果発表などの旅費を中心に使用する。その他には、動力学的な過程を記録・蓄積するための機器についても必要に応じて使用する。
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