研究課題/領域番号 |
23540455
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
高橋 公也 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (70188001)
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研究分担者 |
高見 利也 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 准教授 (10270472)
小林 泰三 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 学術研究員 (20467880)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 圧縮流体 / 空力音 / エアリード楽器 / 音楽音響 |
研究概要 |
平成23年度は、主に、1)流体音源の分布と音と流れの相互作用の解析、2)Lighthillの理論とHoweの渦音理論の比較検討、3)音高の変化の再現のための移動境界問題のプログラムの開発、以上3つの課題に取り組んだ。 流体音源の分布と音と流れの相互作用の解析の課題では、圧縮性LESを用いて2次元及び3次元エアリード楽器の流れ場と音場を同時に再現し、流れ場の分布からLighthillの理論を用いて音源分布を求めた。数値計算上の制約の為に、我々の3次元モデルは、2枚の平行な板の間に挟まれた準2次元モデルであり、流体的には3次元的に振る舞い、音響的には2次元的に振る舞う。解析の結果、2次元モデルでもジェットの流速に対する発振周波数の関係、特に、特定の流速領域における共鳴発振状態を再現可能であることが分かった。しかし、2次元楽器は3次元楽器に比べて発振が不安定になる。これは、2次元では、ジェットがエッジに衝突して出来る渦が長時間安定に存在し、それらの不規則な運動がジェットや管体内の音場を擾乱するためである。一方、3次元モデルでは渦がすぐに消失するので安定である。しかし、3次元モデルでも、本物の楽器に比べ管体内の共鳴音場が小さくなる。これは、開口端の反射率が準2次元モデルでは3次元楽器よりも小さくなり、強い共鳴状態が作れなくなるためである。 Lighthillの理論とHoweの渦音理論の比較検討の課題では、Howeの渦音源分布とLighthillの音源分布を比較検討した結果、分離解法を用いた遠方音場の再現には、Lighthillの分布の方が、数値的な取り扱いにおいて容易であるとの結論を得た。 音高の変化の再現のための移動境界問題のプログラムの開発の課題では、移動境界問題のスキームを開発し、管体長の変化に伴う音高の変化を再現することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた平成23年度の3つの課題、1)流体音源の分布と音と流れの相互作用の解析、2)Lighthillの音響的類推とHoweの渦音理論の比較検討、3)音高の変化の再現のための移動境界問題のプログラムの開発を、ほぼ達成したため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、1) 分離解法を用いた遠方音場の再現、2) 流体音の発生メカニズムの解明、3) 音孔の開閉に伴う音高の変化の再現、以上3つの課題に取り組む。 分離解法を用いた遠方音場の再現の課題では、LighthillとHoweの音源分布の中で、前年度の課題「Lighthillの理論とHoweの渦音理論の比較検討」で最適と判断されたLighthillの音源分布を用い遠方音場の再現を目指す。具体的には、分離解法の手法を用いて音源分布を音場解析ソルバーにマッピングし、音場の再現を目指す。さらに、音源分布の特徴がどのように遠方音場の特性に影響を与えるかを解析する。 Lighthillの4重極音源分布を詳細に調べ、4重極音源からどのように音波が発生するかを詳細に検討する。特に、Lighthillの4重極音源からは、音波だけでなく、 局所的な擬似音圧も発生する。音源分布の幾何学的な形状とその時間変化が、疑似音圧と音波の発生にどのように寄与するかを詳細に検討する。また、Howeによって提案された音と流れのエネルギー交換を評価する理論を発展させ、スペクトルの各領域での音と流体のエネルギー交換過程を調べる。この課題の目標は、流体音が流体エネルギーの散逸過程でどのように発生するかを明らかにすることである。技術的には、数値計算で再現される広いスペクトル領域での流れ場の精度の検証が必要となる。 音孔の開閉に伴う音高の変化の再現の課題では、前年度に開発した移動境界問題の試験的なプログラムをもとに音孔の開閉を再現できるプログラムの開発を行う。音孔の開閉に伴うメッシュの切り替えの問題を解決し、音孔の開閉による音高の正しい切り替えが可能なプログラムを作成する。さらに、音高が遷移するときの管体内部の流体と音場の変化の解析を行い、過渡状態における楽器の挙動の解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、当初予定していたマルチCPUパソコンの購入を行わなず、九大情報基盤センターの超並列計算機を使用することになった。そのため、その差額分が残額として残った。繰り越した経費は、次年度以降の経費と合わせ、九大情報基盤センターの計算機利用料およびポスト処理に必要なパソコン及びファイルサーバーの購入に当てる。次年度以降の使用計画は以下の通りである。平成24年度の経費は、主に、九大情報基盤センター計算機利用料、データ処理に必要なパソコン及びファイルサーバーの購入、国内、国外の出張旅費に当てる予定である。平成25年度の経費は、主に、九大情報基盤センター計算機利用料、成果発表のための国内、国外の出張旅費に当てる予定である。特に、海外の国際会議で成果を発表するための外国旅費が必要である。
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