研究課題/領域番号 |
23540456
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
斎藤 幸夫 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (20162240)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ヘテロエピタキシー / 微細加工基板 / 弾道蒸着模型 / S/SiO2界面 |
研究概要 |
結晶基板上に異種原子が吸着したヘテロエピタキシー系で見られる様々の自己組織化現象について計算機シミュレーションと理論解析を行って調べる。 ヘテロエピタキシーでは基板と吸着系の格子不整合性に起因する歪みを取り除くため、基板表面を微細加工することがある。柱状列に微細加工した基板上の吸着原子が基板を濡らしていく緩和過程を調べ、柱の間隔によって核形成支配の確率論的緩和モードと表面拡散支配の決定論的緩和モードの二種類あることを見出した。(Phys. Rev. Lett. に掲載。) また、このような微細加工基板上に吸着原子を蒸着して結晶成長させるとき、吸着結晶粒界間に競合とその粗大化が生じる。この粗大化過程に対し、最も簡単な弾道蒸着模型を適用し、粒界密度の時間変化に対する相似則を見出した。また、スケーリング指数に対する表面拡散の効果を調べた。(Phys. Rev. E に掲載。スイスの国際学会で発表。) また、半導体集積回路で用いられるSi酸化膜上のSi薄膜は、ヘテロエピタキシー系の重要な典型例である。この系を昇温すると、Siは脱濡れ現象を起こして微小な島の列を自己組織化する。この島を更に昇温すると、Siが酸化膜と化学反応して蒸発するが、その際に激しく動き回り、また酸化膜上に孔を穿つ。マルセイユの実験グループがこの一連の自己組織化過程を観察しており、私は彼等との議論からこの系の理論的モデルを構築し、シミュレーションして、興味深い予備的結論を得ている。その結果はオーストリアの国際学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平坦および微細加工基板表面への異種原子の蒸着に際して生じる結晶粒界の競合と粗大化について、最も簡単なモデルでの解析を終了し、論文発表できたのは非常に順調な進展である。今後、より現実的な模型について同様の研究を行う予定である。また、SiとSiO2界面での穿孔現象について、理論模型の妥当性がほぼ確認されたことも、予想以上の進展といえる。
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今後の研究の推進方策 |
微細加工基板表面への蒸着過程に対し、より現実的な原子間相互作用や熱揺らぎの効果を取り込んだ模型を構築し、結晶粒界間の競合と粗大化について調べる。また、これまで考えていなかった、ヘテロ界面での格子不整合に由来する弾性エネルギーの効果も取り込んだ系の緩和現象を調べる。Si/SiO2界面での穿孔現象については、シミュレーションを進め、より定量的に実験との比較を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
歪みエネルギーの計算や3次元のSi/SiO2界面形態の時間発展などをシミュレーションするためには多数の計算資源、CPUが必要であり、次年度に新たなワークステーションを購入する予定である。また、平成23年度は外国旅費を使用する機会がなく、そのために予算に残額が生じた。次年度にフランスへの国外出張を予定しており、この残額を活用して理論および実験グループとじっくり共同研究や討論行う予定である。
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