研究課題/領域番号 |
23540460
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
新井 正男 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 主幹研究員 (40222723)
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研究分担者 |
初貝 安弘 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 教授 (80218495)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 電子構造 |
研究概要 |
擬2次元系に対して、磁場中でバンド構造を計算して、量子化されたホール伝導度を計算するプログラムの開発を行なった。一般的な強結合模型に対して、一様磁場を飛び移り積分の位相として取り込んで計算する。入力データを作成することで、プログラムを変更することなく、任意の構造に対応できるようにした。 一様磁場中で電子構造計算を実施する場合、磁気並進群の対称性により大きな磁気的単位胞を用いる必要があり、磁場が存在しないときに比べてはるかに大規模な計算が必要になる。すでに、磁気並進群の対称性を使うことにより、強結合近似による電子構造計算に必要な計算量を大幅に減少させることに成功しているが、今年度はさらに、PCクラスタ用の並列化を実施することにより、さらなる高速化を行なった。近年のPCには、マルチコア型のCPUが実装されており、個別のPCに対してはOpenMPを用いた共有メモリ型の並列化が最も望ましい。さらに複数台のPCを高速ネットワークで接続して計算させるために、MPIを用いた分散メモリ型の並列化を行なった。いずれの場合も、磁気的ブリルアンゾーン内のk点に関して並列化を行なっており、非常に高い並列化効率を得ることができた。 一様磁場中での量子化に起因する現象であるドハースファンアルフェン効果を解析するために、磁場中での軌道磁化の数値計算を進めている。特に、半古典的手法では定量的な扱いが困難な磁場破壊に関して、今後、検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗がやや遅れた外部的要因としては、以下の2点がある。(1) 今年度の研究予算の配分額の確定が遅れたために、PCクラスタ計算機の設置が遅れた。(2) 節電要請に対応するために、夏季期間に計算機の一部を停止した。 また、研究を進めていくうえで、一様磁場中の軌道磁化に対するあらわな表式を求めることが困難な状況になっている。現在は、数値微分によって評価しているが、この方法が正当化される保証はない。(一様磁場に対する微分が定義できる保証はない。)最近の文献も参考にして、さらなる検討を進めてゆく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
プログラム開発をドキュメントの整備を進める。第一原理計算によって得られるバンド構造を入力として用いる方法を検討する。第一原理計算から強結合模型を得る様々な方法に関して検討する。また、昨年度に引き続き、一様磁場中での軌道磁化の評価を進め、半古典理論との対応関係を調べる。強磁場中では、磁場破壊と呼ばれる現象が実験的に観測されている。この現象は、磁場中でフェルミ面に沿って「運動する」電子が、強磁場では異なるフェルミ面に移ってしまうことにより生じると考えられている。半古典近似の範囲では磁場破壊現象を定量的に取り扱うことは困難であるが、電子構造を有限磁場で直接計算することにより、磁場破壊現象を定量的に議論する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費は主に、今年度導入したPCクラスタ計算機を増強するために利用する。国内外の学会/研究会に参加して、研究成果を発表するとともに、最新の研究動向を確認するために、旅費を利用する。
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