研究課題/領域番号 |
23540464
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
斎藤 弘樹 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (60334497)
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キーワード | 超流動 / 量子渦 / ボース・アインシュタイン凝縮体 |
研究概要 |
カルマン渦列とは、流れる流体中に障害物を置いたとき、その下流に生成される規則的な渦の連なりである。この現象は古くからよく知られており、流体の粘性が渦列の生成に重要な役割を果すことが分かっている。ところが最近、本研究代表者の研究グループによって、粘性を持たない超流動体である気体のボース・アインシュタイン凝縮体においても、カルマン渦列が生成されることが数値的に明らかにされた。しかしながら、その生成機構や詳しい生成条件は明らかになっていない。本研究では、粘性を持たない超流動体においてカルマン渦列が生成される物理的機構を解明し、量子流体における流体不安定性の理解を深めることを目的としている。 今年度の研究では、新しい物理系へ研究を展開することにより、新たな知見が得られた。本研究では当初、超流動体として気体のボース・アインシュタイン凝縮体を想定していたが、近年急速に研究が進展している、半導体共振器中の励起子ポラリトン超流動体を本研究の新たな物理系に設定し、カルマン渦列をはじめとした量子渦に関する研究を行った。その結果、励起子ポラリトン超流動体においてもカルマン渦列によく似た渦列形成が見られることが数値的に明らかになった。このことはまったく自明ではない。気体のボース・アインシュタイン凝縮体と励起子ポラリトン超流動体の間の大きな違いは、前者が熱平衡状態にあるのに対して、後者はポンプと散逸が釣り合った非平衡定常状態にあることである。励起子ポラリトン超流動体でも渦列生成が可能であることを示したことで、実験的提案の範囲が広がり、超流動体におけるカルマン渦列生成の実現可能性が高まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的である、超流動体における渦列生成の機構を数学的に解明することに対しては完全に達成できたとは言えないが、渦列生成に対する理解は着実に深まっている。それに加えて、励起子ポラリトン超流動体という新しい物理系にも研究範囲を広げることで、より広い視点から現象をとらえることができている。
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今後の研究の推進方策 |
気体のボース・アインシュタイン凝縮体に加えて、励起子ポラリトン超流動体にも視野を広げ、二つの物理系に対して、並行して研究を進める。気体のボース・アインシュタイン凝縮体に関しては、引き続き、渦列生成に関する研究を行う。励起子ポラリトン超流動体に関しては、主に散逸系特有の渦現象を探求したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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