研究課題/領域番号 |
23540466
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
森脇 喜紀 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (90270470)
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研究分担者 |
榎本 勝成 富山大学, その他の研究科, 准教授 (50452090)
梶田 雅稔 独立行政法人情報通信研究機構, その他部局等, 研究員 (50359030)
松島 房和 富山大学, その他の研究科, 教授 (40142236)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | イオントラップ / 精密測定 / 分子イオン |
研究概要 |
1. CaH+のスペクトルの理論計算 CaH+のab initio計算により基底および励起状態におけるCa-H+2体ポテンシャルを求めた。これらを用いてCaH+を実験的に分光するための候補となる,遷移およびその波長を求めた。特に,本研究では400nm帯のX1Σ-A1Σ遷移を分光のターゲットとしている。2. リニアトラップの作成 Ca+および分子イオンを大量に蓄積するためのリニア型四重極トラップを作成した。イオンの生成は,原子線と電子衝撃あるいはレーザーによるイオン化,固体サンプルのレーザーアブレーション法などの方法が利用できる。真空容器にはガス導入系を備えてあり,トラップ原子と中性分子との衝突による分子イオン生成を行う。トラップ容器は10^-9Torr程度の真空度まで達している。3. 高感度分光計の開発 実験的な分光データが存在していないCaH+の分光を行うための分光計を作成した。レーザーアブレーションや放電,あるいは,パルスレーザーを用いての分子からの光イオン化などの方法により生成したCaH+分子イオンを高感度に分光するために,100MHz程度の高周波周波数変調によるレーザー分光計を開発した。高周波を用いることにより,レーザーアブレーション法などでの生成イオン数が短時間で増減する状況においても高い感度で分光測定を可能にする方法である。また,分子イオンを高温下あるいは放電により生成するための石英製の分光用セルを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子イオンの構造や遷移波長に関する理論的な研究が進展し,始めて実験的な測定を行うための準備が整った。分光測定実験については,様々なアプローチを想定し準備が進んでいる。クライオスタットへのイオントラップの導入を目指していたが,リニアトラップの作成と真空容器の導入までが出来ている。トラップの特性について今後調べていく。また,低温での実験にはヘリウムクライスタットの準備ができている。
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今後の研究の推進方策 |
1. Ca+と中性分子衝突によるCaH+の生成 リニア型イオントラップのトラップ特性の測定を行う。閉じ込められたCa+イオンと中性分子との衝突による分子イオン生成の効率を測定する。トラップのさいに,Ca原子をイオン化する為のレーザーダイオードの納期が次年度にずれこんでいる。このレーザーの周波数安定化を行い,イオンの生成条件の最適化を行う。2. 低温イオントラップの実現 低温域へのRF電流の導入について検討し,イオントラップをヘリウムクライスタットに導入する。3. CaH+分子イオンの分光 作成した高感度分光計を安定な分子などの分光を通じて最適な分光条件を見出す。その後,レーザーアブレーション法,または,分子の放電あるいは光イオン化などにより分子イオンを生成させ,これらをパルスレーザーによる直接吸収,周波数変調法によるレーザー分光などにより分光測定を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の方策にしたがい,主に,レーザーダイオードの購入とその周波数安定化に必要な行為学部品,CaH+イオンの分光に必要な光学部品,イオントラップ実験やクライオスタットへの導入に必要な真空部品等にあてる予定である。
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