研究概要 |
1. CaH+の分光 CaH+イオンについては,これまで実験による分光データが存在していない。昨年に引き続き,パルスレーザーを用いたレーザーアブレーションによりCaH+を生成し,パルス色素レーザーによるレーザー誘起蛍光法による分光を行った。水素ガス中で金属Caをレーザーアブレーションし,そのプラズマについて400nm帯(X1Σv=0-21Σv=2,3)で励起し600nm帯(21Σv=2,3-X1Σv=8,9)での発光を検出した。H2ガス圧やアブレーションパルスエネルギーなどをパラメータとして吸収線を測定した。多くの吸収線が測定された。CaH+のX1Σ-1Σ遷移がダブレット的であると予想されたため容易には判定できなかったが,さらに詳細に調べると,微細なダブレットが見出され,多くの遷移が中性分子(CaH)のスペクトルであることが判明した。中性分子としても未同呈のバンドがあるためその同呈をすすめた。一方イオンのスペクトルはこれら中性分子のスペクトルに埋もれていると考えられるが,中性分子を排除してスペクトルを測定する必要があると考えた。そこで,イオントラップ中のCa+からCaH+を生成するとともにトラップ中に蓄えておき,CaH+のレーザー共鳴解離をCa+からの蛍光が増加により検出手法を導入し,CaH+の分光を継続している。 2. 分子ガイドと分子温度の測定法の開発 イオントラップされたCa+と衝突相手の分子をも冷却するために,Stark速度セレクターを作成している。本年度は,液体窒素トラップを導入して分子供給用真空容器の真空排気速度を増強させることにより,ガイド中での分子衝突による分子の損失を減らし,更に分子供給ノズルを冷却して供給される分子の初期温度の低温化を計った。その結果,ノズル温度が210Kの場合には,常温に比較してガイドされる低温の分子流量を2倍に増強させることができた。
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