研究課題
本研究では、申請者らが世界で初めて開発した「イッテルビウム(Yb)光格子時計」について、光格子レーザーによる高次光シフトに起因する不確かさの軽減のため、原子を捕獲しつつ時計遷移周波数にはなんの影響もない、光格子の波長(魔法波長)の中でも特に原子の共鳴から正に離調をとる、「青方離調魔法波長」の探索を目的とした。この場合、原子は光格子の腹ではなく節に捕獲されるため、高次光シフトに起因する不確かさが大幅に軽減できると期待される。申請者による簡便な計算によれば、Yb原子の場合、青方離調側では波長399nm以下に魔法波長が存在するので、まずは、波長399nmの光源の開発を行った。このために、波長798nmの外部共振器半導体レーザーの光をテーパードアンプによって2W程度まで増幅し、光共振器中におけるPPKTP結晶による第二次高調波発生により約100mWの399nmの光を得た。また、この青色レーザーによる光シフト量を速やかに測定するためには、セシウム原子時計やUTC(NMIJ)などのマイクロ波周波数標準に基づく測定ではなく、他の光周波数標準との直接的な比較を行うことが望ましい。そのために、独立に開発されたストロンチウム(Sr)光格子時計(絶対周波数評価済)との周波数比直接測定実験を行い、これに成功した。これは、異種光格子時計同士の直接比較実験としては世界で初めてである。実際の青方離調魔法波長の探索には至っていないが、上記の二つの達成状況により、Yb原子の青方離調魔法波長の探索は速やかに実行可能と考えられる。一方、399nmの光源はYb原子の冷却に必要であり、大強度の399nm光源の開発に成功したことは、捕獲原子数の増大にも直結するため、Yb光格子時計自体の性能向上に貢献する重要な成果と言える。
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Optics Express
巻: Vol.22 ページ: 7898-7905