研究課題/領域番号 |
23540473
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
眞山 博幸 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (70360948)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 濡れ現象 / 表面張力 / 接触角 / ピン止めエネルギー |
研究概要 |
初年度の平成23年度では液滴が1本の円柱状ピラーへ侵入する際のエネルギー障壁の実証とその大きさの評価について実験的な研究を行なうことを目標としていたが、以下に列挙するように当初の目標を大きく超える成果が得られた。(1) 当初の目標であった1本の円柱状ピラー(シリコン樹脂で作製。直径2ミリ)のピン止めの実験を行ない、液滴の形状からピン止めエネルギーの数値を得た。現在、論文を執筆中である。(2) さらに複数のピラーを正三角形状、正方形状で配列したマルチピラー表面をシリコン樹脂で作製し、その液滴の形状や浸み込みの状態を定量的に調べた。この際、ピラー間隔と液滴の体積を系統的に変化させ、浸み込みが起きる条件を調べた(平成24年度の研究実施内容の一部)。(3) (2)の実験でピラー間隔に液滴が侵入する条件を理論的に求め、実験値をよく再現することを見出した(平成25年度の研究実施内容の一部。実験結果と併せて論文執筆中)。(4) (2)~(3)での研究により、次年度以降の目標であるマルチピラー表面の濡れを自由エネルギーに基づいて実験・議論する戦略が確立した。(5) マルチピラー表面の濡れのダイナミクスの観点からラフな親水性表面での濡れ広がりの研究を行ない、実験結果を定量的に説明する理論を見出した(論文として出版)。(6) 国内外の研究会やシンポジウムに積極的に出席し、昆虫、植物、水棲生物、海洋生物の研究者と情報交換や議論を行なった。その結果、体表面の構造と濡れの関係についての共同研究を立ち上げることができた。(7) その他にも材料科学や微細加工技術の研究者と共同研究を立ち上げた。(8) 論文2報、国内外で発表15件(うち招待講演1件)の成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は初年度において当初予定していたよりも格段に進展している理由は以下の通りである。(1) 初年度において当初の目標を達成するだけではなく、平成24~25年度で計画していた研究実施内容の一部の実験と理論の研究を行なうことができた。具体的には、より単純化したモデルを作製して実験を行なう技術を習得したとともに、実験結果を定量的に説明する理論的解釈を得ることができた。(2) 国内外の異分野(分類学、植物学、微細加工)の研究者と情報交換し、具体的な共同研究数件を立ち上げることが出来た。 (3) 実験パラメータを強く意識した濡れの現象の熱力学的レベルでの理論の基礎を確立してきている(通常の濡れの議論は表面張力のレベルでのものであり、熱力学的安定性を議論することはできない)。(4) 実験技術においても新しい実験手法を確立してきている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、本研究は以下のように遂行する。(1) 研究結果をまとめた論文を出版する。現在執筆している本研究成果に関連する論文(4本)やすでに得られている共同研究の成果をまとめた論文を平成24年度中に出版する。(2) 異分野の研究者との交流を諮るためにBiomimetics関連の研究会に出席し、本研究で得られた成果を異分野の研究者や応用研究の企業研究者にフィードバックする。(3) 現在行なっている(またはこれから立ち上げる)共同研究を強力に遂行する。(3) 共同研究者や連携研究者と日常的に連絡をとりあい、密な情報交換や議論を行なうことに努め、今後の研究の方向性を常に俯瞰する。(4) 精密な表面構造をもつ基板を作製するグループに積極的にアプローチし、精密な実験を行う素地をつくる。
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