研究課題/領域番号 |
23540474
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
瀧本 淳一 山形大学, 理工学研究科, 教授 (50261714)
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研究分担者 |
SUKUMARAN S.K. 山形大学, 理工学研究科, 助教 (70598177)
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キーワード | 環動ゲル / 紐状ミセル / 絡み合い / シミュレーション / 管模型 / 高分子ブレンド / 会合性高分子 |
研究概要 |
環動ゲルの非線形弾性を簡単なモデルに基づくシミュレーションにより理解する研究を進めている。特に、未架橋のCD(シクロデキストリン)分子の分子鎖に沿っての並進のエントロピーを考慮すると、実験との不一致(実験では Neo-Hookean モデルに非常に近い場合があるのに対し、シミュレーションでは一軸・平面伸長下での応力が高くなる)が解消されることを示した。これは新しい種類のエントロピー弾性と考えることが出来る。 紐状ミセルに関しては、簡単なネットワーク(絡み合い)組み替えモデルにより、実験で観測される単一緩和(1個の緩和時間だけを持つ)を再現出来るかを検討しているが、現時点では実験との良好な一致は得られていない。 ネットワーク構造の弾性率と架橋点間の分子量の関係、特に架橋点の位置の揺らぎが弾性率に与える影響は、ゲルやゴムのような永続的なネットワークの場合を中心に、古くから議論されて来ている。この問題を、会合性高分子のような一次的ネットワークまで含めて議論し直した結果を論文にまとめている。 高分子液体の分子シミュレーションで得られた分子配置から分子鎖間の絡み合いを抽出する手法は、2004年に研究分担者(S. K. Sukumaran)らにより開発されて以来多くの系に適用されており、剛直な分子鎖の方が柔軟な分子鎖より絡みやすいことなどが既に明らかにされいる。今年度我々は、この手法を剛直鎖と柔軟鎖のブレンドに適用し、管の太さは2種類の鎖に対し共通となること、またその管直径が簡単なブレンド則にほり予言可能であることなどを示した。 ゲルや高分子の多くのモデルでは、絡み合い・架橋以外の分子鎖間相互作用を無視して応力を求めているが、その正当性の基礎付けはほとんどされていない。この問題の解決に向けて、簡単なシミュレーションモデルにより分子鎖間の相関を調べた結果を論文にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環動ゲルに関しては、自由CDの効果を取り入れたことで、ほぼ研究の目的は達成していると考える。現在論文準備中。 紐状ミセルに関しては、まだ定量的に緩和弾性率を計算出来るまでに至っていない。主な原因は、ネットワークの組み替えを計算機上で実現するのに予想以上の困難があったことであるが、モデル自体が現実の紐状ミセルを十分捉え切れていない可能性もあり、改良を進めている。 剛直鎖と柔軟鎖のブレンド系は、当初の目的には無かった問題であるが、最近の渡辺等の実験に触発されて新たに開始したテーマである。シミュレーションで得られた結果、とくに管直径が2種類の鎖に共通であることは極めて興味深く、また簡単な理論によりブレンド則を説明することにも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
環動ゲルについては論文にまとめる。 紐状ミセルについては、まず、現在の組み替えモデルの範囲内での計算手法を完成させる。組み替えの際に新しい相手を3次元空間内で探す手順に困難(あるいは曖昧性)があるので、絡み合い高分子に対して用いて成功している仮想空間モデル(個々の鎖を固有の仮想空間に配置)を拡張して適用することも試みる。もし得られたシミュレーション結果が実験と一致しないのであれば、その理由を明らかにして行きたい。 剛直鎖・柔軟鎖のブレンドについては、これまでの結果を論文にまとめた後、ブレンドの緩和弾性率を求め実験と比較検討する。また、実験では剛直性だけでなく分子鎖の太さ(モノマーサイズ)も大きく異なるので、その効果をシミュレーションあるいは理論に取り入れることが可能かどうか、検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度中に紐状ミセル系の大規模計算を開始するに至らなかったため、計算機購入の費用が次年度使用額として繰り越されている。これを含めた次年度の研究費の使用計画: シミュレーション用計算機の購入(主にミセル系、およびブレンド系の計算に用いる)。 9月15-19日にローマで開催される International Soft Matter Conference 2013 で S. K. Sukumaran が、また10月13-17日にケベック(カナダ)で開催されるアメリカレオロジー学会で滝本が発表予定。また国内学会において2名で計4回程度発表する予定。これらの旅費に使用。 論文発表の費用(別刷り代等)。
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