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2011 年度 実施状況報告書

生体分子系に対する軟エックス線分光理論計算

研究課題

研究課題/領域番号 23540476
研究機関広島大学

研究代表者

高橋 修  広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60253051)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード放射線、X線、粒子線 / 生体分子 / 内殻励起 / 化学物理
研究概要

近年の放射光利用技術の進歩およびX線自由電子レーザのような新しい光源の利用により、軟X線領域における分光学が急速に進展した。本研究では私が今まで培ってきた研究ノウハウを生体分子系に応用する。生体分子系に特徴的な物性の1つであるX線自然円二色性分光法(XNCD)と、近年新しい光源であるX線自由電子レーザを使った研究のうち特に注目されている内殻二重イオン化状態(DCH)の計算手法を構築する。まずXNCD法について述べる。本年度は密度汎関数(DFT)法レベルにおいてXNCDスペクトルを理論的に計算する新規コードの開発を行い、これを密度汎関数法計算プログラム"StoBe"に組み込んだ。次に最も単純なアミノ酸であるグリシン、D-,L-アラニンに対してテスト計算を行った。グリシンはD,L体の区別がなく、XNCDスペクトルピークは消失するが、アラニンはD,L体においては両者の強度は反転する。またスペクトル強度の基底関数依存性、汎関数依存性についてチェックした。さらに配座依存性について考察した。次に、DCHの計算手法をDFTレベルにおいて行った。まずホルムアミドにおいて非経験的分子軌道法, DFTにおいてDCH状態の精度について調べ、DFT法は化学的議論に十分耐えうる手法であることを確認した。本手法を様々な系に応用した。生体分子の例として、核酸をターゲットとした。次に正孔間距離に対する依存性を調べるためSiF3(CH2)nSi(CH3)3(n=0-4)に対し、計算を行った。またSiX4(X=H,F,Cl,CH3)において、K-2, K-1L-1, L-2殻励起において計算を行った。DCHの理論研究において、計4報の論文(そのうち本科研費の補助機関で2報)を発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

まずXNCD法について述べる。初年度の目標は新規コード開発とそのテスト計算であった。当初計画どおり研究は進行中である。次に内殻二重イオン化状態(DCH)の計算について述べる。こちらは当初計画よりかなりすすんでいる。当初目標はDFT法レベルでのDCH状態計算の精度評価および小さな分子に対する応用であった。研究は順調に進み、DCH状態計算に関する論文を23年度に計4報(そのうち本科研費の補助機関で2報)報告できた。小さな分子に対する応用が早期に成功を修めたので、次により大きな分子に対する応用として、核酸分子を選択した。核酸分子の実験は23年度にスタンフォードにあるLCLSで実際に行われ、現在データ解析が行われている。本実験には本科研費助成により私も参加できた。私の計算はいい参照データとなった。

今後の研究の推進方策

上で述べたように現在のところXNCD法は当初計画どおりに、DCH状態の計算は当初計画より研究は進んでいる。XNCD法については、実験スペクトルとの比較を目指し、結晶状態におけるアミノ酸に対し理論計算を行う。計算はすでに田中、泉らによって実験報告のあるアラニン、セリンについて行う。DCH状態の理論計算では、系統的に分子種、化学結合状態、を変え、計算を行うことにより、化学結合の本質にせまる。次にDCH状態の理論計算にも構造変化の影響は重要であろうと思われる。構造変化をあらわに考慮したDCH状態の理論計算について検討をはじめる。DCH状態の研究の進捗が当初計画よりすすんでいるため、次の段階へ研究をすすめる。

次年度の研究費の使用計画

初年度の研究は当初計画どおり進行中である。次年度にも初年度に導入した演算サーバと同レベルの演算サーバを導入し、研究室内における演算機能の強化を図る。また、サーバを安定して運用するため無停電電源装置を導入する。その他はいくつかの学会に出席するため、また研究打ち合わせのため国内旅費、海外旅費に使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Molecular double core hole electron spectroscopy of nucleobases2011

    • 著者名/発表者名
      O. Takahashi (他4名)
    • 雑誌名

      J. Phys. Chem. A

      巻: 115(44) ページ: 12070-12082

    • DOI

      10.1021/jp205923m

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Molecular double core-hole electron spectroscopy of large molecules for probing molecular size: A series of bridged trihalosilyl-trimethylsilyl molecules2011

    • 著者名/発表者名
      Osamu Takahashi, Katsuyoshi Yamasaki, Shin-ichi Nagaoka, Kiyoshi Ueda
    • 雑誌名

      Chem. Phys. Lett.

      巻: 518 ページ: 44-48

    • DOI

      10.1016/j.cplett.2011.11.006

    • 査読あり
  • [学会発表] 軟 X 線分光法に対する理論計算手法の開発2012

    • 著者名/発表者名
      國武 尚登、木元 麻衣、高橋 修、山崎 勝義
    • 学会等名
      日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム
    • 発表場所
      鳥栖、鳥栖市民文化会館・中央公民館
    • 年月日
      2012年1月8日
  • [学会発表] アンモニアの光刺激脱離反応に関する理論的研究2012

    • 著者名/発表者名
      谷哲龍 、高橋修、山崎勝義
    • 学会等名
      日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム
    • 発表場所
      鳥栖、鳥栖市民文化会館・中央公民館
    • 年月日
      2012年1月8日
  • [学会発表] 生体分子に対するX線二重内殻正孔分光理論計算2011

    • 著者名/発表者名
      高橋 修,田代 基慶 ,江原 正博,山崎 勝義,上田 潔
    • 学会等名
      分子科学討論会
    • 発表場所
      札幌、札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2011年9月23日
  • [学会発表] Theoretical Calculations of Vibrational Relaxation in O2+N2 System2011

    • 著者名/発表者名
      Okubo,Yasuhiro; Takahashi,Osamu; Yamasaki,Katsuyoshi
    • 学会等名
      化学反応討論会
    • 発表場所
      東京、東京工業大学(デジタル多目的ホール・コラボレーションルーム)
    • 年月日
      2011年6月8日
  • [学会発表] Soft X-ray emission spectra of carbonate ions in aqueous solution of alkali carbonates2011

    • 著者名/発表者名
      Yoshida,Ayaka; Arai,Hidemi; Horikawa,Yuka; Tokushima,Takashi; Takahashi,Osamu Oura,Masaki; Gejo,Tatsuo; Honma,Kenji; Shin,Siik
    • 学会等名
      化学反応討論会
    • 発表場所
      東京、東京工業大学(デジタル多目的ホール・コラボレーションルーム)
    • 年月日
      2011年6月8日

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公開日: 2013-07-10  

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