研究課題/領域番号 |
23540480
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
藤森 裕基 日本大学, 文理学部, 准教授 (80297762)
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キーワード | 水 / 熱測定 / シリカゲル / 高圧 / 相転移 |
研究概要 |
化学物理の分野で現在注目を集めている問題の一つに「液体-液体相転移」がある。液体-液体相転移はこれまでヘリウムの超流動が知られているが、近年、リンや亜リン酸トリフェニルにおいて液体-液体相転移が存在する可能性が指摘されている。 「水」は生命を維持する上で欠かすことの出来ない物質の一つである。地球表面はその3分の2は水で覆われており、人体の60%は水で出来ているといわれ、細胞を形成する上で重要な役割を果たしているのも水である。水分子自身は非常に単純な構造ではあるが、その物性は非常に奇妙であり、古くから科学的研究対象となってきた。例えば、4 ℃で水の密度が最大になることは、既に300年前から知られていたが、現在でも充分に理解されていない問題の一つである。三島らは計算機シミュレーションにより水で液体-液体相転移が存在する可能性を見出した [O. Mishima and H. E. Stanley、 Nature、 396、 329-335 (1998)]。しかしながら液体-液体相転移が存在すると推測される温度・圧力領域では、水は全て結晶化してしまうため、水における液体-液体相転移は未だ実験的には見出されていない。 そこで、本研究では、水における液体-液体相転移の観測およびナノ空間内に閉じこめられた水や高圧下におかれた水など、極限状態における水の物性を明らかにすることを目的とし、熱力学的な手法、および分光学的な手法を用いて研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度では、水を細孔径をコントロールしたシリカゲルに充填しDSC測定を行った。その結果、細孔径の逆数に依存して水の融点が低下することが見出され、一次元の細孔の場合、細孔径2.2 nm以下では水が過冷却して110 K付近まで結晶化していない可能性が見出された。今年度は水の融点をさらに低下させるために、不純物としてNaCl、KCl等の電解質物質やスクロース等の糖類を混合した水をシリカゲル細孔に充填し、DSC測定を行った。その結果、純粋な水に比べて更なる融点の低下が観測された。これはシリカゲル細孔により物理的制限を受けている水の中に不純物が添加されることにより、水の相互作用距離がさらに制限されたためと考えられる。しかしながら細孔内に閉じこめられた水をバルクの水と同等と見なして良いかという問題、さらに不純物が水の物性に関してどのような影響を及ぼしているかに関しても解明する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまで実験は全て大気圧下において行ってきた。しかしながら、水における液体-液体相転移は高圧下に存在すると予測されている。また高圧下における水の物性、特に液体や気体状態における研究例は未だ少ない。そこで、高圧下における熱測定を計画している。現在装置を試作中であるが、まだ精度の高いデータを得るには至っていない。そこで、装置の開発を進め、高圧下における熱測定データが得られるようにする。またこれまでは熱測定というマクロな測定を中心に研究を進めてきたが、水の物性をより理解するためにはミクロな測定も必要と考える。そこでNMRやRaman測定なども行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費は主に高圧DTAの開発に関する部品の購入に用いる。同時に大気圧下におけるDSCや分光学的実験等も進めるため、その測定用冷媒の購入等にも用いる。高圧下の実験に関してはその経験が豊富な元東京工芸大学教授の前田洋治氏や東京工業大学教授の小國正晴氏、さらにはパリ南大学教授のAlba-Simionesco氏らに助言を求める。旅費は国際会議や国内会議での研究発表の際の旅費として用いる。
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