研究課題/領域番号 |
23540481
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
常重 アントニオ 法政大学, 生命科学部, 教授 (30409346)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アロステリー効果 / 蛋白質会合 / ヘモグロビン / 接触面 / 蛋白質間相互作用 / 蛋白低分子間相互作用 |
研究概要 |
アロステリー現象を示す蛋白質システムのほとんど全ては,多量体である.これらのシステムは機能調節を示す.その中から最も知られている蛋白システムはヒト・ヘモグロビンである.この蛋白質は四量体α2β2の形から構成され,各サブユニットに一つのヘムを有し,ヘムにリガンド分子が可逆的に結合すると共に,他のヘムのリガンドへの親和性が徐々に増加する.この現象は,サブユニット同志でリガンド結合の有無の情報が伝える.この情報は構造変化に由来すると考えられている.最も知られているアロステリックモデルは 2-状態 Monod-Wyman-Changeux(MWCモデル)である.しかし,未だにこの機構は厳密に解明されていない.四つのサブユニット間の相互作用を調べる作業は複雑である.なぜなら,接触面が多いからである.(すなわち,α1←→β1,α1←→α2,α1←→β2,β1←→β2,α1←→α2←→β2,α1←→β1←→β2,β1←→α1←→α2などの経路が存在すると考えられる).本研究では,四量体ではなく,二量体α1β1を安定化することによって,サブユニット間相互作用はα1←→β1に単純化できる.しかしながら,この概要はMWCモデルでは認められていない.なぜなら,2-状態モデルは全体の蛋白質システムにしか限らない.本研究の目標は次のとおりにまとめる.(1)α1β1接触面において化学修飾を行い,この新たな接触面は二量体や四量体にどの影響を与えるかを調べる.このα1β1接触面は,ヘモグロビンでのアロステリー現象には関与していないと考えられたが,本研究の予備実験の結果はこの仮定を否定する.(2)二量体α1β1システムがアロステリー現象を示すなら,接触面は一つしかないため,その機能を厳密に調べることは可能である.(3)この研究から得られた知識は,他のアロステリック蛋白システムにも応用できると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度の計画を先取りして,平成23年度で行ったことは以下の通りにまとめる.(1)二つのα1β1化学修飾ヘモグロビンが合成に成功した.天然ヘモグロビンと比較するとこれらの酸素結合特徴は極めて異なっている.この結果は,今までの知識と反論する.(α104Cys-S-S-pyridyl)2(β112Cys-S-S-pyridyl)2ヘモグロビンは,酸素への親和性は極めて低下し,協同性はほとんど示さない.この特性は,天然Hbにおいて強いアロステリックインキイノシトル- 6-リン酸およびbezafibrateの存在下でしか見れない.この化学修飾ヘモグロビンはサイズ排除クロマトグラフィーやITC測定によって四量体から二量体への反応は非常に抑えていることが分かった.つまり,この機能特性は四量体の構造に由来していると考えられる.一方,1H-NMR測定の結果によると,リガンドがヘムに結合するとこの四量体はTからR-状態に変わる.R-状態でありながら,リガンドへの極めて低い親和性を持つヘモグロビンというのは矛盾する.(2)一方,(α104Cys-SH)2(β112Cys-S-S-p-nitrobenzene, 93Cys-S-acetamide)ヘモグロビンは,二量体様な酸素結合特性を示した.この化学修飾ヘモグロビンは,二量体から四量体への会合反応は物理的に阻害されていると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
(1)ヒト・ヘモグロビンのα1β1接触面に存在するCys残基を狙って,多種の化学修飾を行う.それらのヘモグロビンの溶液中の構造(1H-NMR測定など),ITC,酸素結合特性などを調べる.(2)多種のosmolyteの合成を行う.Osmolyteの疎水官能基を選択することによて,蛋白質システムとの相互作用が変えられる.これによって,蛋白質の特性が変わると予測されている.ヘモグロビンの二量体界面はリガンドが結合することによってその疎水性自体が変わると考えられる.すなわち,リガンドがヘムに結合することによって,四量体が二量体になりやすくなる.この二量体間接触面は水和度が増加するといえる.逆に,リガンドが解離するとこの二量体接触面の疎水性が増加し,二量体が会合が強くなり,四量体構造が安定化されっる.十分に疎水性のあるosmolyteが合成できれば溶液中において四量体が二量体に「解ける」と期待できる.(3)現在までの本研究の結果より,古典理論に反論し,二量体にもアロステリー現象がみられる.化学修飾,または適当なosmolyteを利用してこの二量体のアロステリー機構を調べる.(4)これらの化学修飾ヘモグロビンの構造を探るためにX線結晶解析を試みる.(5)X線解析法から得られた構造に基づいてMDを行う.今までに研究されていないα1β1接触面は本研究の結果より極めて重要な役割を果たすと分かった.
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)購入したバイオラッドラボラトリーズの「分取用等電点電気泳動装置」を使い熟せるために消耗品(特殊なampholytesなど)の購入が必要である.さらに,(2)研究計画どおり,多種疎水性を有するosmolyteを合成,精製などを行うための試薬などを購入する予定である.ヘモグロビンの酸素結合特性を確認したうえで四量体への効果を評価する.(850,000円).(3)現在までの結果は,国際学会に発表する. 2012年8月29日~9月1日パルマ,イタリアで行われるXVIIth International Conference on Oxygen Binding and Sensing Proteinsおよび2012年9月22日~24日名古屋大学で行われる第50回日本生物物理瓦解年回に発表する予定である.(150,000円)
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