研究課題/領域番号 |
23540484
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
小林 敬道 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (20260028)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 衝撃波誘起発光 |
研究概要 |
これまでに観測例のない、衝撃波により誘起される特殊な発光現象の解明に向けての実験を開始した。まず、発光特性を詳細に調べるため、強い衝撃波誘起発光を示すことがわかっている粉末蛍光物質EuCl2とCeCl3を最初の試料として用いた。発光はブロードであることが予想されたので、可視領域全体をカバーできるように時間分解発光測定装置を改良して測定を行った。この測定の結果、衝撃波誘起発光スペクトルの発光領域は当初の予想(半値全幅で数十ナノメートル程度)をはるかに上回り、可視域から赤外域にわたる非常にブロードな発光であることがわかった。更に、発光性物質ではないCsCl粉末を試料として用いたところ、EuCl2やCeCl3を大きく上回る強度の衝撃波誘起発光が発生することがわかった。また、衝撃強度依存性を見るために、衝撃強度の非常に弱い場合とその10倍程度の強い衝撃強度の場合の衝撃波誘起発光を比べたところ、衝撃強度の増加に伴い、発光強度は大きく増加する一方、発光波長の変化は小さいこと(数十ナノメートルの短波長シフト)が明らかになった。これらの実験事実から衝撃波誘起発光は、フォトルミネッセンスあるいは熱放射としてだけでは説明できないことがはっきりした。長波長可視域から近赤外にかけての領域にピークがある非常にブロードな発光であること、発光性物質でないCsCl粉末からも強い衝撃波誘起発光が観測されること、衝撃強度を大きく変化させても発光波長の変化は小さいこと、がこれまでに明らかになってきた衝撃波誘起発光の主な特性であり、衝撃波により誘起される未知の発光現象である可能性が高まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
衝撃波誘起発光はフォトルミネッセンッス類似の発光である可能性が高いと推測していたが、非発光性物質のCsClからも強い衝撃波誘起発光が観測されたことから、当初の予測は必ずしも正しくはないことがわかった。しかし、未知の発光現象の新たな特性が明らかになりつつあるということであり、この発光現象のメカニズムの解明に必要な基礎データが得られているという点では着実に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
衝撃波誘起発光は可視域から近赤外域にわたるブロードな発光であることがわかった。現行の装置は可視域全体の測定を可能にするよう改良したものであり、赤外域はカバーされていない。発光スペクトルの全貌を観測するには近赤外域まで測定可能にする改良が必要であるが、技術的にも難しい改良であり、また、費用的にも直ちに実行できるものではない。そこで、現行の時間分解発光測定装置を用いて可視域での発光挙動を詳細に観測する実験を継続する。 今後の研究の推め方は当初の研究実施計画通りであるが、上記の通り、新しい発光特性が判明しつつあるので、それを考慮した実験を進める必要がある。特に試料の選定にあたっては、できるだけ可視域に発光強度のある試料を見つけ出し、発光特性の基礎データを蓄積する必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
時間分解発光測定に必要な消耗品(光学部品等)および衝撃波発生装置の運転に必要な消耗品など、研究費のほとんどは消耗品に費やす予定である。
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