粉末物質中を衝撃波が伝搬することにより誘起される特殊な発光現象の解明に取り組んだ。発光が非常にブロードであったため、可視領域全体をカバーできるように時間分解発光測定装置を改良して測定を行った。この測定の結果、衝撃波誘起発光スペクトルの発光領域は当初の予想(半値全幅で数十ナノメートル程度)をはるかに上回り、可視域から赤外域にわたる非常にブロードな発光であること、更に、発光性物質ではない粉末でも高強度の衝撃波誘起発光が発生することがわかった。この発光は熱放射である可能性が高いことが判明したが、粉末試料自体の熱放射では説明できなかった。粉末試料の場合、残留ガスが試料中に存在し、粉末試料が衝撃圧縮される瞬間に残留ガスも試料と同じ程度の超高圧に断熱圧縮されることに気が付いた。この場合のガスの温度を計算した結果と残留ガスの量を少なくした試料の実験結果から、この衝撃誘起発光は断熱圧縮による残留ガスの熱放射であるという結論が得られた。また、新しい発見として、蛍光体などの発光性粉末試料の場合、衝撃誘起発光中に熱放射以外の成分が含まれることがあることがわかってきた。この発光は熱放射のようなブロードな発光ではないことなどから、衝撃波で誘起されるルミネッセンスの一種である可能性があり非常に興味深い。新たな今後の研究の展開につながると考えられる。
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