余震は本震の断層の大きさや運動のしかた等の重要な情報を含んでいて,本震直後の地震活動を把握することが特に必要である.しかし,その時間帯は余震が頻発するために通常の方法では震源決定が困難であることから,本研究では,地震波の波形を用いて震源位置と震源メカニズム解を同時決定する方法を開発し,それらの空間的及び時間的変化を明らかにすることを目的としている.本研究の方法ではエンベロープ波形を用い,手続きは,連続波形とテンプレート波形の相互相関の観測点平均時系列の計算,時系列データからの地震の検出,検出した地震とテンプレートの走時差を使っての相対震源決定から成っている.今年度は,東北地方太平洋沖の広範な領域を対象として解析を行った.波形データはHi-net観測点の連続記録及びイベント記録を用い,周波数帯域は2~16 Hzとやや広めに取った.観測点は青森県から千葉県までの主に太平洋側の46点とし,観測点間隔が比較的一様になるように選んだ.テンプレートは空間的に一様になるように186地震を使用し,テンプレート長は,P波到着からの40秒とした.地震がそれほど頻発していない時間帯に対しての適用では,気象庁一元化震源よりも多くの地震を検出した.また,地震波の振幅の空間分布を反映した地震が選ばれていることも確認でき,テンプレートを用いてメカニズム解推定が可能であることも明らかになった.一方,東北地方太平洋沖地震の本震直後の時間帯では,特に宮城県沖から茨城県沖にかけての領域において,検出された地震数が少ない結果となった.これは,相関のよい観測点を選択して処置を行うように改良することで克服できると考えられる.興味深いこととして,海溝沿いでは多くの地震が検出されていることが挙げられ,既存の方法の弱点を補う方法となることが期待される.
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