研究課題/領域番号 |
23540488
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
津村 紀子 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00272302)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 地震波減衰 / Q値 / 内陸地震 / 能登半島地震 |
研究概要 |
地震波の減衰を示すQ 値は,上部地殻の破砕や流体の存在を推定する指標の一つである.本研究ではこのようなQ 値の物性変化に関する変化率の大きさを利用して,能登半島地震震源断層近傍の不均質構造およびその時間変化を求めることを試みる.まず2007年の稠密地震観測データを用いて能登半島地震震源域で推定された3 次元地震波減衰構造の空間的分解能について考察した.P波減衰構造を求めた際に見られた低Q領域の位置に低Qブロックを置いたQ構造モデルを作成し,インバージョンに使った波線経路での減衰の影響を考慮したテスト波形スペクトルを計算した.このテストスペクトルデータにQ値と震源パラメターの同時インバージョンを適用したところ,モデルの低Qブロックは,相対的に低いQ 値を持つことがわかった.モデルに与えたQ値と推定されたQ値の差は30%以内であった.その後,P 波とS 波のスペクトル比データからQp/Qs 分布も求める方法を開発し,2007年の観測に得られた地震波形データに適用した.この方法を適用する際の震源パラメターの選び方について検討を行わなければならないが,暫定的な結果として,能登半島西岸部にある観測点と,より内陸側に入った観測点で取られた波形スペクトルから推定されるQp/Qs値には空間的な傾向が見られることがわかった.また2011年8月9日~10月25日まで,2007 年の地震発生直後に行われた臨時地震観測点のうち5点と同じ位置で臨時観測を行い,19個の自然地震記録が得られた.このデータは今後の解析で2007年時のデータとの比較に使う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の進捗はおおむね順調である.Qp構造の空間分解能と推定値の誤差についての検討を行ったので,Qp/Qs値を推定する際,定量的な値の取り扱いが可能になった.今後,Qp/Qsの推定に関していくつかの数値実験を行い,推定精度を求める予定である.一方,平成23年3月に発生した東北日本太平洋沖地震の影響で,当初他大学から借用予定だった機材の借受ができず,能登半島における臨時地震観測は当初計画より短期間かつ規模を縮小して行うことになった.しかし,この観測においても解析に使用出来る20個程度の地震が収録できたため,今後の解析に使用する.
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今後の研究の推進方策 |
2012年度前半も引き続き開発したQp/Qsの推定プログラムを改良し,2007年度に得られたデータからQp/Qs値の推定を行います.それとともに,当初予定では23年度に行う予定だった臨時地震観測を外部業者に委託して行い,能登半島地震から5年経過後の地震波形を収集します.データ収集が終わる年度後半から,2011年度,2012年度に収録された地震波形と2007年度の波形の比較を行い,地下構造に時間的変化が見られるかの予備的解析を行います.
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次年度の研究費の使用計画 |
2011年度の配分額のうち72万円余りが次年度使用になりました.これは当初計画で2011年度に実施するはずだった10点程度の臨時地震観測を行うための機材が,東北日本太平洋沖地震のため,他大学から借りられなかったためです.そこで急遽民間業者に地震計と記録装置の賃借を依頼しましたが,借りられる期間・数量が当初計画より少なかったため,外部に委託予定だった観測点の設置・保守・回収作業を自前で行い,機材の借受が可能な24年度に,外部に一部作業を委託の上,当初計画通りの地震観測を実施することにしました.2011年度使用しなかった費用は2012年度の予算とあわせ,観測作業の外部委託の費用(その他)として使用します.他に,現地での観測点設置等に行くための旅費,観測データを入れる記録媒体や波形記録打ち出しのためのプロッタ関係の消耗品などの物品費,データ整理を一部院生に依頼するための謝金を使用します.
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