研究課題/領域番号 |
23540490
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古村 孝志 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (80241404)
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キーワード | 南海トラフ地震 / フィリピン海プレート / プレートモデル / 強震動 |
研究概要 |
南海トラフ地震による強震動/津波予測の高度化を目的として、日本列島に沈み込むフィリピン海プレートの詳細な形状の推定を、1)高密度地震観測網で記録された地震波形の詳細解析、2)地球シミュレータを用いた地震波伝播の高精度計算、の二つの観点から進めた。まず、K-NET, KiK-net強震観測データを用いて、深発地震(2009年豊後水道の地震など)がプレート内を伝わり地表に作り出した特異な地動分布(異常震域)の特性からプレートの形状を推察した。従来の微小地震の震源分布から作られたスムーズなプレートモデルと、近年のトモグラフィ研究やレシーバ関数法解析により示された複雑プレートモデルとを比べると、観測された地動分布が複雑プレートモデルの等深度線形状に近く、兵庫県から淡路島にかけてプレート形状が急変する地域で地動が急激に弱まっていることを確認した。次に、二つのプレートモデルを用いて南海トラフ巨大地震の波動伝播シミュレーションを実施した。地表の速度分布や地震波形(振幅、継続時間)を比べたところ、プレート形状の急変地帯で地震波がプレート外に脱出する影響により、局所的に地動が強くなること、その後減衰が大きな地殻内を伝わるにつれて地震波が急激に弱まる効果が確認された。また、プレートが大きく屈曲する地点では、地震波がプレート上面で強く反射して、遠地に強い揺れをもたらす効果が確認できるなど、プレートモデルの変化が南海トラフの強震動評価に与える影響について理解を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り進んでいる。研究成果を地震学会およびAGU大会で発表した。地震波伝播シミュレーションはこれまで地球シミュレータ(海洋研究開発機構)を用いて行ってきたが、さらに大規模な計算に向けて京コンピュータの利用環境も整備された。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画どおり、新しい複雑プレートモデルを用いて、南海トラフ巨大地震の地震動と津波シミュレーションを地球シミュレータ及び京コンピュータを用いて行う。特に、プレート形状の変化による地震地殻変動の違いと、これが津波生成に与える影響を詳しく評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究費でディスク装置を購入し、地震動と津波シミュレーション結果を保存すると共に、科学可視化ソフトウエアを購入して、プレート変化に伴う波動場の変化を可視化表示する。本研究費から研究成果を地震学会及びAGU大会で発表するための旅費を使用する。
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