研究課題/領域番号 |
23540491
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 久芳 東京大学, 地震研究所, 准教授 (70302619)
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キーワード | 地磁気変動 / ダイナモ理論 |
研究概要 |
マントル最下部は地震波速度のコントラストが非常に高い不均質構造をしている。この構造の成因の一つは物質の違いであり、ペロブスカイトからポストペロブスカイトの相転移や、核からの鉄の浸透により作られていると示唆されている。これらはマントル最下部の電気伝導度にも多大な影響を及ぼすため、電気伝導度も横方向に強い不均質構造を持つと予想されている。 平成25年度初頭までに、核―マントル境界を平面で模した場合、および、それを球面と考えた場合の両者について、マントル最下部電気伝導度不均質が核内部の密度が一様な流体のダイナミクスに与える影響を調査したが、顕著な影響は、核表面付近数100km以内のみに現れることがわかった。影響が限定的である一つの原因は核内部の密度が一様である仮定したことによる。実際の地球中心核では、表層に低密度領域が存在する(安定成層している)ことが地震学から示唆されている。このため、当初の計画にはなかったが、より地球に即した状況を設定に取り入れて調査する必要があると考え、平成25年度は、核表層数十 km が安定成層をしている場合についての定式化を行い、解析を開始した。成層が無い場合と比較すると、やや強い流れが存在できるという結果が得られたが、鉛直および動径方向の関数の取り扱いによる解への影響が危惧され、最終的な結果を得るには至っていない。また、解析の過程において、外部から系に与える磁場の空間分布に解が強く依存する可能性があることを発見したが、結果を一般化するに至っていない。 核内部の密度構造が一様な場合に関する成果の一部を、湘南国際村センター(神奈川県)で開催された、地球深部研究(SEDI)プレシンポジウムにおいて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画立案時には、マントル最下部の電気伝導度不均質が核内部のダイナミクスに多大な影響を与え、非双極子磁場からマントル最下部の電気伝導度や特徴的な分布を推定できると期待していた。これまでに、マントル最下部電気伝導度不均質内部の電磁誘導の効果が、特にトロイダル磁場を起源とする磁場変動に強く影響を与えることを示す事はできたが、予想に反し、核内部のダイナミクスに与える影響は限定的であるという結果が得られた。この理由の一つが、核内部の密度が一様であると仮定したことにあると考え、予定にはなかった、核表層が安定成層している場合についても解析することとした。解析を継続しており、最終的な結論を得るには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に開始した、核表面に安定密度成層が存在する場合について、マントル最下部電気伝導度不均質が核のダイナミクスに与える影響を、電磁流体力学解析を行うことにより、継続して調査する。このとき、成層の強さと核表面付近の磁場の鉛直(動径)分布の両者の影響を考慮する。また、熱流量不均質が同時に存在する場合についても解析を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に、24年度から行っている、球面境界の不均質が熱流量と電気伝導度のそれぞれの場合ついて解析結果をまとめ、地球電磁気・地球惑星圏学会およびアメリカ地球物理学連合大会において公表する予定であったが、核内の密度に関する当初の状況設定が不十分であったため計画を変更し、密度構造を含めた解析を行ったのちに、結果をまとめて公表することとした。このため、上記の学会には参加せず、未使用額が生じた。 8月に開催されるSEDI(Study of Earth’s deep interior)2014 国際シンポジウム、10-11月に開催される地球電磁気・地球惑星圏学会と、12月に開催されるアメリカ地球物理学連合秋期大会(開催地:サンフランシスコ)で研究成果を発表する。これらの学会への参加費と旅費として使用する。また、2編の論文にまとめて国際誌に投稿する予定であり、英文校正費と出版費として使用する。
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