研究概要 |
本研究課題は,地震メカニズムトモグラフィー法(FMT法,Terakawa et al., 2010, Geology)を発展させ,地震のメカニズム解から地殻内間隙流体圧場の時空間変化を推定し,大地震に伴う余震・誘発地震の発生メカニズムを解明することを目的としたものである.前年度までに,スイス・バーゼルの地熱貯留層での注水実験で誘発された地震データから地熱貯留層内の間隙流体圧場を推定することに成功し,本手法の有効性を確認した(Terakawa et al., 2012, JGR).一方,より広域な領域を対象とするために,「応力場の空間変動を考慮する機能」を追加開発した(2012年日本地震学会秋季大会, A11-08). H25年度は,まず,「応力場の空間変動を考慮する機能」を使用し,日本列島域の広域応力場(Terakawa & Matsu'ura, 2010)と名古屋大学の地震観測で得られた高密度な地震データにFMT法を適用し,御嶽山周辺域の3-D間隙流体圧分布を推定することに成功し,間隙流体圧場と地震の発生の関係を分析し,その成果を論文として発表した(Terakawa et al., 2013, Tectonophysics).また,本課題の最も大きな課題となっていた「間隙流体圧場の時間発展解析機能」の開発を実施した.まず,模擬データを用いたテスト計算を通じて時間発展解析機能のチェックを行った.その後,本手法をH24年度に使用したものと同じバーゼルの誘発地震データセットに適用し,注水刺激により地熱貯留層内に間隙流体圧場が形成されてゆく様子(10日間)を再現することに成功した(2013年日本地震学会秋季大会, A21-01).本研究の成果により,地震の発生と応力場と間隙流体圧場の関係が初めて明らかになり,継続して論文にまとめているところである.
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