研究課題/領域番号 |
23540497
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
田部井 隆雄 高知大学, 教育研究部自然科学系, 教授 (40207220)
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研究分担者 |
久保 篤規 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (60403870)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 中央構造線 / 地震 / 地殻変動 / 燧灘 |
研究概要 |
西南日本下部にはフィリピン海プレートが沈み込み,内陸には大規模横ずれ断層である中央構造線が形成されている.西南日本の地殻変動と地震活動を理解するには,プレート境界だけに注目しては片手落ちで,中央構造線の断層面構造とすべり様式の解明が必須である.とくに,地域の大局的な地殻構造が北傾斜を成していることから,中央構造線北側の地震・地殻変動データが重要な鍵を握る.こうした認識に立ち,中央構造線北側の燧灘,高縄半島,その周辺の計10ケ所において防災科学技術研究所高感度地震観測網Hi-netを補間する短周期・高感度地震観測計を設置し,また燧灘上の2つの島に国土地理院GPS全国観測網GEONETを補間するGPS観測点を設けた.現在まで欠測無く連続データが得られている.いずれのデータも,周辺のHi-netおよびGEONET定常観測点データと統合した処理を行っている. 詳細な震源分布,発震メカニズム解,主応力の地域差,過去のGPS稠密観測による変位速度解析結果などをもとに,中央構造線の北側にある幅を持った剪断帯が形成されているとの作業仮説を立て,その検討を行った.また,プレート境界深部の固着変化と長期の地殻変動のトレンド変化の関係も調査した.以上の成果を日本地震学会2011年度秋季大会(10月12-15日,静岡市)において発表した.また,西南日本のGEONET変位速度場をもとに,南海トラフにおけるプレート間固着と中央構造線の断層面固着・すべり分布の関係を詳細に検討し,その成果をAmerican Geophysical Union 2011 Fall Meeting(12月5-9日,サンフランシスコ市)において発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書記載の研究目的を達成するための基礎となる定常観測網を補間する地震・GPS観測は,ほぼ予定通り開始できた.ただし,交付申請後の2011年3月に東北地方太平洋沖地震が発生し,西南日本でも地殻変動場・応力場がそれ以前とは大きく変動したと予想されることから,現状を把握するため注意深くデータを蓄積している.また,燧灘では3つの島での観測を計画していたが,うち1つは居住者のいない私有地であることが判明し,観測を断念した.解析の面では,地震,GPSデータとも定常観測網データとの統合処理が進んでいる.GPSデータに関しては,携帯電話通信カードとWi-Fiルータを用いて計器をインターネットに接続し,大学からリアルタイムデータがアクセス可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した年度計画と大きな変更はない.地震観測,GPS観測を継続してデータを蓄積し,前年度に行った解析の精度向上を図る.また,前年度に立てた作業仮説の検証に向け,可能な限り定常観測網データを活用する.成果発表を積極的に行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度から約27万円の繰越金(経費の約18%)が生じた.そのおもな理由は,現有機材の有効利用により新規購入物品を節約できたこと,データ収集と機材メンテナンスのための現地訪問の回数が予定より少なくて済んだことによる.平成24年度も観測を継続して実施するが,経費の配分予定額は前年度より40%少ない額であり,繰越金を加えることで約30%の増加が見込める.増加分をおもに成果発表のために活用したい.
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