研究課題/領域番号 |
23540498
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
安藤 雅孝 琉球大学, 理学部, 客員教授 (80027292)
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研究分担者 |
中村 衛 琉球大学, 理学部, 准教授 (60295293)
宍倉 正展 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (00357188)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 明和の津波 / 琉球海溝 / 津波堆積物 / 津波石 / C14年代測定 / ジオスライサー / 津波発生間隔 / 有孔虫 |
研究概要 |
本研究の目的は、琉球海溝沿いの巨大津波の発生頻度を推定することにある。1771年明和の大津波が発生し、主に石垣島を中心に、宮古島や多良間島等に、溺死者1万人を超す被害を与えた。この津波以前にも、他の津波が発生したことは、津波石の研究から知られている。本研究は、津波堆積物の掘削調査から、過去の津波発生を推定する新しい試みである。本年度は石垣島を調査対象とし、島内4カ所(新川、名蔵、桃里2カ所)、で掘削調査を行った。掘削は、ジオスライサーを用いて、ハンマー重機で地層に打ち込み、サンプルを採取した。C14年代測定のため、計8本の地層を抜き取り、津波層の調査を行った。 調査結果概要は、以下の通り。新川サイトにおいては、表層に近い泥炭質土壌から現代、その下位の細砂層からAD1650-1950とAD1580-1810、さらに下の層からAD1550-1800の年代とほぼ同じ年代の結果が得られた。これらの地層は、地層構成物質の解析結果と合わせて、明和津波層であると判断した。さらに下位に含まれる現地性の合弁貝はAD810-1000を得た。上記のデータからAD810-1000以降,明和の津波だけ発生したと言える。名蔵サイトでは、表層に近い泥炭質土壌からの種子の年代は現代であった。津波堆積物の可能性がある砂層からは年代測定に適した試料は得られなかった。最下層の泥質堆積物からは、 AD670-850であったので、最上層を津波堆積物と考えると,明和津波の可能性がある。桃里ては、BC1870-1650,AD690-880,AD420-600と年代値は幅広く,明和の津波の一つ前の津波堆積層の可能性がある。 結論として、1771年明和津波の堆積資料が得られると共に、一つ前の津波は、少なくともAD420-600年以降に発生した可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度は、石垣島の津波堆積層を同定し、C14年代を決定した。既に述べたように、本研究では、異なる時代、異なる堆積環境の構成物質からなり、かつ明らかに短期間に堆積したと思われる地層を津波堆積層と判断した。これらの地層構成物質の年代から、深さ50cm程度の地層は1771年明和の津波層、下層はAD420-600年以降の津波層と判断した。この結果、津波の発生間隔は、少なくとも、1000年程度であると考えられる。このように、穂年度の目的である、石垣島の津波の発生間隔推定はほぼ達成されたものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度は、宮古島を調査象地点としている。ジオスライサー調査は、本研究の経費枠内では実施が困難なこと、および宮古島ではジオスライサー打ち込みのインパクターのパワーが十分に望めないことの理由から、バックホーによる掘削調査に適宜変更する。しかしながら、宮古島においては、完新世地層厚は薄いものと推定され、バックホーによる掘削で十分な深度が得られる。すでに調査地点の予備調査は行ったので、6月末に宮古島、池間島、伊良部島計6カ所で掘削調査を行う。調査から得られたC14年代結果および有孔虫による堆積環境の推定に基づき、宮古島における津波発生頻度を求める。
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次年度の研究費の使用計画 |
6月末に宮古島、池間島、伊良部島計6カ所で前年度と同様に掘削調査を行う。経費としては、上記工事費(項目その他)、および代表者と分担者の調査旅費に充てる。また、地層剥ぎ取り用溶液等消耗品費も必要とする。C14 年代測定は10件ほど依頼したいが、予算が限られるため、工事費が当初見積より低い場合のみ、10件依頼したい。本研究の経費としては、科研費だけでは十分でないため、前年度に引き続き、代表者および分担者の個人研究費を旅費およびC14測定費に充てる予定である。
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