研究課題/領域番号 |
23540498
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
安藤 雅孝 琉球大学, 理学部, その他 (80027292)
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研究分担者 |
中村 衛 琉球大学, 理学部, 准教授 (60295293)
宍倉 正展 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (00357188)
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キーワード | 津波 / 掘削調査 / 1771年津波 / 琉球海溝 / C14年代測定 / 石垣宮古島 / 有孔虫 / 津波堆積物 |
研究概要 |
本研究の目的は、琉球海溝に沿う大津波の発生間隔を完新世の堆積層の掘削調査を通して推定することにある。前年度は石垣島において調査を実施し、本年度は、宮古島と石垣島の両島で掘削調査を実施した。6月、10月、2月の3回にわたり調査を行ったが、概要は以下の通りである。 ①6月調査:調査地点は、宮古島1カ所、池間島2カ所、伊良部島2カ所である。以下、それぞれの成果について述べる。宮古島:南部海岸付近での調査を実施したが、津波堆積物と確証できる証拠は見つかっていない.さらなる調査を必要としている。ただし、民家に代々伝わる言い伝えから、海抜18mまで津波が遡上したことは確認された。現在も、有効虫の鑑定から津波の証拠を検討している。池間島:2カ所掘削したものの、島尻マージ以外の地層(完新世以前)より新しい地層は見つからなかったため、ここでの調査は断念した。伊良部島:2カ所掘削。約1000年前に、津波と思われる地層が見つかっている。さらに2000年前との推定もあるが、現在検討中である。 ②10月調査:石垣島桃里地域の3カ所で実施。1771年津波石の下に、津波堆積物と思われる地層が発見された。年代から、1300年前頃と推定される。 ③2月調査:1カ所掘削。桃里部落北の牧場で長さ10m掘削。10月の調査と同様の津波層と1771年津波層が見つかった。これは今回の調査を通して初めてのことであった。 2.まとめ:宮古島諸島および石垣島の掘削調査を実施し、1771年の津波の他に、石垣島では約1500年前、宮古島では1000年前ほどに津波が発生したと推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果で述べたように、掘削調査を通して、1771年の津波堆積物を見つけ出すことができ、かつその一つまえの津波は、石垣島では1500年BP程度、宮古島では1000年BPと求められたことは、予定通りであった、ただし、当初は、数回の津波を求めることを目的としたが、掘削した地層は、2-3千年前は、すぐに島尻マージ(完新世)に不整合的に接し、さらに古い津波を推定することが困難である。また、当初は、ジオスライサーを使用する予定であったが、この掘削方法は大型重機を必要とする上に、サンゴ礁が卓越する沖縄諸島では、石灰によるセメンティング効果があり、ほとんど打ち込むことができず、能率の悪い方法で有ることが分った。このため、バックホーによる掘削を行った。この手法の方が、経費は10分の1、時間も短縮することができた。石垣、宮古島のように、土地に余裕があるところでは、現在の掘削方法は望ましいと思う。
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今後の研究の推進方策 |
23-24年度で得た資料の分析と論文執筆を行う。分析は有孔虫を用いて、堆積物の深さの推定を行う。津波層は、現在、C14年代測定と有孔虫の種の個体数の分布から判断している。あきらかに、深層有孔虫の多い地層を、表層の有孔虫と比較して、津波層と決めている。ただし、浜の砂層を陸地内部に運んだ場合は、必ずしも深層有孔虫とは限らない。したがって、総合的な判断が必要とされる。この種の検討を加え他の値、論文を作成する。さらに、深い検討を行うために、さらに調査研究を推進するため、次の科研費に申請する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度の経費は限られているため、その多くは、C14年代測定費の一部と旅費に使用される。これまでに、30件程度のC14年代測定を実施したが、科研費が限られているため、経費はすべて個人研究費が充てられた。このため、今年度も同様に、個人研究費が充てられている予定である。その他の経費は、個人研究を充てる予定である。
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