本研究では、強震動観測を簡易化するための小型・低消費電力の観測システムの開発と地震波干渉法を利用した高空間分解能の大深度地盤構造の探査手法の確立を主な目的とした。この目的の達成により、関東平野では、首都圏地震観測網(MeSO-net)や首都圏強震動総合ネットワーク(SK-net)などの観測点と合わせて1000を超える地点での強震動波形の収録が可能になり、堆積盆地構造を高空間分解能で把握してモデル化することにより、強震動及び長周期地震動の評価の高度化に資することができると期待される。 本研究では、主に、強震動観測を簡易化するための小型・低消費電力の観測システムの開発、地震波形データ取得のための地震観測、波形データの解析による関東平野の大深度地盤構造の推定、及び大規模な堆積地盤構造と長周期地震動の関係に関する研究を実施した。新しい観測システムの開発では、乾電池で数ヶ月ほど動作可能な小型・低消費電力の強震動観測システムを製作した。地震観測では、既設の地震観測点の少ない関東平野北東部における大深度地盤構造を高空間分解能で推定するために、MeSO-netやSK-netなどの地震観測点の隙間を埋めるように、埼玉県・千葉県・茨城県内の計11地点での臨時地震観測を実施した。大深度地盤構造の推定については、本研究及び他機関によって関東平野に展開されている地震観測点(MeSO-netやSK-netなど)で収録された近地地震の波形データを地震波干渉法に基づいて解析し、各観測点下における地盤構造を詳しく推定した。大規模な堆積地盤構造と長周期地震動の関係に関する研究では、新しく構築した大深度地盤構造モデルを用いた三次元地震動シミュレーションによって、関東平野北部における長周期地震動(ラブ波)の励起の特徴を説明することなどに成功した。
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