研究課題/領域番号 |
23540500
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
竝木 則行 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 副所長 (50274428)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 固体惑星探査 / 惑星データ解析 |
研究概要 |
科学研究費申請時には,平成23年度中に研究計画の第一段階としてウェーブレット解析を応用した球面調和関数の局所化と月重力モデルと地形モデルの相関解析を行うことを予定していた.実際に,平成23年度中に予定通り,(1) 窓関数として3次のB-スプライン関数[Starck et al., 2006]採用したウェーブレット解析を実施し,(2) 月重力モデルと地形モデルの相関解析を行った.Namiki et al. [2009]の提唱する盆地分類に従って,Type I盆地としてKorolev,Dirichlet-Jackson,Mendeleev盆地を,Type II盆地としてFreundlich-Sharonov,Hertzsprung,Orientale盆地を,またprimary mason盆地としてCrisium,Serenitatis盆地の局所重力-地形相関解析を行った.この解析から,第一に,Type I,II盆地,primary mason盆地の分類は局所解析でも明確に区別されていることが明らかになった.第二に,Namiki et al. [2009]が盆地の分類の目安としている重力の中央ピークの幅によってアドミッタンスのパターンが変わることが判明した.即ち,Type I盆地は次数と共に正の階段状にアドミッタンスが変化する.Type II盆地はアドミッタンスが正と負に大きく振れ,変化パターンのバリエーションが多い.Primary mason 盆地は負のアドミッタンスを示す.これらのアドミッタンスパターンは内部密度異常を反映しており,Type II盆地 は Type I盆地からprimary mason盆地への遷移状態と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科学研究費申請時には,平成27年度までの5ヵ年を三段階に分けて研究を実施する計画を立てている.昨年度はその第一段階を終了しており,予定通りに達成している.しかしながら,研究を進めるに当たり,局所重力-地形相関解析の定量的精度評価という新たな課題が明確になった.地形モデルについては,高度データとは独立に,画像データから作成されたデジタル・エレベーション・モデルと比較することで信頼性を評価することが可能である.そして,そのような比較から誤差は十分に小さいことが確認できる.一方,重力場モデルは独立に比較検討できる類似データが無いため,信頼性評価が困難である.そこで,研究計画の第二段階として予定していた盆地地下密度異常のモデル化に進む前に,内部構造が比較的単純であると想定される月高地について局所重力-地形相関解析を行うことにした.この定量的精度評価が終了した段階で,成果報告を投稿・出版する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,月高地について局所重力-地形相関解析を行う.月高地は盆地に比べ重力と地形の相関が高く,高次(短波長)の重力は,主として地形による(ブーゲー重力異常)と推定されている.従って,高次の局所重力-地形アドミッタンスは一定の高地密度に対応する値になるであろうと期待される.しかしながら,これまでの予備的解析では,計算された局所重力-地形アドミッタンスは必ずしも一定の値を示さず,次数と共に10-30 %の変動を示している.この原因としては(1) 重力モデルの信頼性が低い,(2) 局所重力-地形相関解析での計算違い,(3) 想定外の地形補償メカニズムが月高地に働いている,が考えられる.(1) については,アドミッタンスの変動がコリレーションとは対応していないため,重力モデルのランダムな誤差であるとは考えられない.(2) については,地形モデルから作成した擬似重力場モデルで再計算を行い,手法に誤りがないことを確認した.上記の理由から(1)と(2)を排除し,(3)が最も有力であると考えられる.よって,平成24年度は,高地の局所重力-地形アドミッタンス解析に注力し,高地内部構造の研究を行う.平成25年度以降は当初の予定通り,月盆地研究の第二段階として Type I盆地かType II盆地への遷移と,Type II盆地からprimary mascon 盆地への遷移を定量的に検証する数値モデルを構築する.その後は第三段階に移行して,数値計算結果をもとに,多様な「かぐや」観測データの統合的理解を試みる.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画では,平成24年度は計算結果可視化ソフトウェアの購入を予定していたが,研究計画の変更に伴い,数値計算用ソフトウェアの新規購入に研究費を割り当てる.購入予定のソフトウェアはMathematica Version 8(Linux用)であり,価格は191,600円である.その他には,昨年度購入済みの数値計算用並列計算機の消耗品,および旅費(国内,国外)にあてる.
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