研究課題/領域番号 |
23540504
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
藤江 剛 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 技術研究副主任 (50371729)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 地震波干渉法 / 海底地震計 / エアガン / 構造探査 / 重合前深度マイグレーション |
研究概要 |
本研究は、海底地震計とエアガンによる屈折法・広角反射法構造探査で得られたデータに地震波干渉法を適用することで、従来は構造解析に使用できなかった後続波から情報を引き出し仮想的な記録断面(データ)を合成し、そのデータを生かして解析することにより従来よりも更に深部の構造を詳細にイメージングすることを目指すものである。 初年度にあたる平成23年度は、効果的な仮想記録断面(データ)の合成方法を確立することを目指し、種々の検討を行った。検討には、海底地形や地下構造が単純で解析手法の検証に適している北西太平洋海域の海洋地殻上で実施した海底地震計・エアガン構造探査データを用いた。 地震波干渉法により仮想的な記録断面を合成する原理は単純で、別々のエアガンショットによる探査記録波形の相互相関を重合(スタック)すればよい。したがって、より質の高い仮想記録断面を合成するには、相互相関が高まるような処理を施せばよいことになる。本研究では、実際の構造探査データの性質を詳しく分析することで、効果的に広角反射波が合成できる周波数帯を検討し、3-9Hz程度のやや低周波の信号に絞って相互相関を取ることが効果的であることを把握した。さらに、低周波成分に絞るには、単純な周波数カットフィルタ(バンドパスフィルタ)を適用するよりも、水中をダイレクトに伝播した高周波成分に卓越したフェイズを外科的ミュートすることがより効果が高いことが分かった。また、そもそもジオメトリ的に相互相関が高まりにくいショットの組み合わせの場合、それも含めて重合するよりは、質の悪いトレースを省いた方がS/Nが向上することも分かった。これはデータ数が充分でないため、重合効果によりイメージング結果の向上が望めないことが原因であると考えられる。 以上のような工夫をすることで、実際のデータで良質な仮想記録断面を合成することが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、海底地震計とエアガンによる屈折法・広角反射法構造探査で得られたデータに地震波干渉法を適用することで、従来は構造解析に使用できなかった後続波から情報を引き出し仮想的な記録断面を合成し、そのデータを活用することで従来よりも深部の構造を詳細にイメージングすることを目指すものである。初年度である平成23年度は、良質な仮想記録断面(データ)の合成方法を確立することを計画していた。 実際のデータを用いて種々の検討を加えた結果、地震波干渉法により後続波から効果的に情報を引き出しS/Nの高い仮想的な記録断面の合成手法を確立できた。したがって、おおむね順調に研究が進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
3年間の研究計画のうち2年目である平成24年度は、前年度に確立した合成手法を実際の海底地震計とエアガンを用いた構造探査データに適用して仮想記録断面を合成し、重合前深度マイグレーションにより深部構造をイメージングするための技術的な詳細を検討する。この種の研究は初めてのものであるため、イメージングが比較的容易であると考えられる単純な地下構造が想定される単純な北西太平洋海域で取得した実データを用いて検討する。 平成24年度の研究により、比較的構造が単純な場所における深部構造のイメージング手法の確立ができると期待される。そこで、最終年度である平成25年度は、この手法を複雑な地下構造が想定される海溝型巨大地震の発生帯における構造探査データに適用し、巨大地震が発生するプレート境界面などの深部構造のイメージングを試みる。データとしては、東南海地震が発生したことで知られる南海トラフ、熊野灘における海底地震計・エアガンデータを用いる予定である。従来の研究では、地震断層のもっとも浅い部分しかイメージングされていないが、本研究の手法によりさらに深部の断層の詳細がイメージングできる可能性があると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は地震波干渉法に関する解析手法の検討が中心であったが、その検討結果を実際の大容量データに適用するためにワークステーションの購入を検討していた。しかし、平成23年12月にワークステーションを発注したにも関わらず納品が予定より二月程遅れて平成24年3月1日になってしまった。研究の進捗には大きな遅れは生じなかったが、平成23年度予算で賄う予定だったワークステーションの費用は平成24年度に繰り越す結果となった。 以上の経緯から、平成24年度はまず前年度から繰り越した研究費でワークステーションを購入する。続いて、今後の解析に必要となる数テラバイト以上のデータ保存領域を確保するため、大容量ストレージを購入する。その他、研究成果を国内外の学会で発表するための旅費や消耗品の購入を計画している。
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