研究課題
前年度の成果は、南海トラフ軸近傍における超低周波地震活動を広帯域海底地震計記録解析からそれまで非地震性域と考えられていた海溝軸近傍においても地震活動が起きていることを明らかにし、そこでは津波地震と呼ばれる、地震の揺れに対して大振幅の津波が発生することを示唆するものであった。この結果に基づき、本研究課題である微差圧計を広帯域地震計に装備することにより水圧と地動を同時に観測するシステムを作り上げ、日本海溝近傍における観測を実施した。また、新しい海底地震計としてparoscientific社製の三軸加速度計を用いた観測装置の開発にも取り組んだ。地震発生帯では通常用いている広帯域地震計である速度計は強震動に対し振り切ってしまうため正確な見積りができない。そこで、この新しい海底地震計は広帯域強震計として地震発生帯において有効であるとして開発を始めた。今年度は2011年東北沖地震震源域において、通常の広帯域地震計+微差圧計のごく近傍に三軸加速度計を設置し、320日におよぶ並行観測を実施した。期待通り、広帯域地震計では振り切ってしまう地震動に対しても、三軸加速度計では正確に地震動を記録することを確かめることに成功した。この他にも、微差圧計でも感度があるような地震発生域における固液共存系の振動現象など多数の興味深い現象を捉えることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
今年度は本計画の本来通りの研究計画実施と共に、それから得られた結果に基づいた新しい観測計画を立て実施した。多少寄り道をしている部分もあるが、本計画提案時には全く予想していなかった定常時の固液共存系における振動現象であり、超低周波地震の発生メカニズムを考える上でも重要な問題となる可能性を秘めている。今後はこのメカニズムを明らかにすべく解析を進めていく。
現在までの達成度でも述べた通り、本研究計画を提案した時点では全く予想していなかった新しい現象を新しい観測によって検出している。この新しい現象とは固液共存系における振動現象であるが、これは本研究計画の主題である超低周波地震活動を理解する上でも鍵となる現象であると考えられる。次年度は本計画の最終年度であるが、検出された現象のメカニズムを明らかにしていきたい。
観測消耗品費として計上していたが、リチウム電池などは研究室在庫品を用いたためその分差額が生じた。次年度は今年度までに得られた海底観測データの解析に重点をおくため、解析に必要な計算機やその成果の発表のための旅費に当てる予定である。
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