研究実績の概要 |
平成25年度までに得られた、紀伊半島沖の南海トラフで広帯域地震計を用いた海底地震観測研究の重要な結果として、従来非破壊域とされていた海溝軸近傍で「超低周波地震」と呼ばれる普通の地震に比べ時定数が異常に長い地震が起きていたことを見出した。また、これと同時に、これまで実態が不明であった海溝軸近傍で発生する「津波地震」についても同様のメカニズムで起きることを示唆するものであった(Sugioka et al. 2012, Nature Geoscience)。2011年東北沖地震は破壊域は海溝軸近傍にまで及び、その一部は「津波地震」的な振る舞いを見せ、第二波であるインパルシブな津波(周期4分程度)についてはこれによるものと考えられている。 以上の研究結果を踏まえ、2011年東北沖地震の余震観測として、地震破壊域の南端である房総沖周辺において1年間の6点の広帯域地震観測網を展開したところ(同海域では20点の短周期地震観測網も同時に展開)、フィリピン海プレートが沈み込む、比較的に付加体堆積層が厚い部分では、低周波成分に富む地震を検出することに成功した。このような低周波地震は、太平洋プレートが沈み込む海洋性堆積層が優勢な層が薄い堆積層内では検出されていない、特異な地震と考えられる。低周波地震と付加体堆積層との関連性については、代表者らの過去研究成果においても指摘されている(Sugioka et al. 2001, JGR)。本研究成果で見出された、低周波地震と堆積層構造の関連性は、「津波地震」のメカニズムにも関係する可能性が高いと考えられる。今後も継続して研究をすすめ、両者の関連性を明らかにしていくつもりである。
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