研究課題
平成25年度は、これまでに本課題で実施したCTD(電導度水温深度計)を基準とするXBT(投下式水温深度計)の海上比較実験で取得したデータの解析を進め、さらに本課題以前に実施してあったいくつかの実験の結果をこれに統合して再解析することによって、本課題で当初計画した数値モデル開発の実現可能性を検討した。主に日本国内で市販されている通常のTSK(鶴見精機)製T7型XBTの降下速度に及ぼすプローブ重量の変化の影響は、空中重量を10g減ずるごとに約1%であること、および、これは錘の重量調整とワイヤの巻量調整のいずれの方法によっても有意に違わないことを確認した。この降下速度の変化率は重量調整の変化率にほぼ比例しており、プローブ重量の変化が合理的に降下速度に反映されることがわかった。一方、欧米中心に世界中でより多く使用されているSippican社製のT7/DBと前述のTSK製T7との降下速度の相対差は、両者の重量差や双方に見込まれる重量のバラツキを考慮しても、なお説明できないことが確かめられた。このことは、2社のプローブの構造的差異に起因する抵抗係数の違いが、プローブ重量の影響のほかに無視できない要素として降下速度に影響していることを強く示唆している。自由落下型センサの降下運動の数値モデル化においては、抵抗係数の定量化が極めて重要で、その高確度化のためには、さらなる実験的調査が必要であると言える。また、TSK社のXBT製造過程における重量の品質管理基準に照らして、この重量変化がもたらす降下率の年々変動はかなり小さい。このことは、海洋の水温場の長期変動を巡って近年、論議の的となっている「XBTバイアス問題」において、プローブの製造過程における重量のバラツキに起因する影響の範囲を限定し、海洋温暖化等の実質的な変動と測器問題に起因する見かけの変動とを分離する上での指針の一つとなるものである。
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