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2012 年度 実施状況報告書

高湿潤場における降水機構にエアロゾル過程の与える影響に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23540511
研究機関名古屋大学

研究代表者

篠田 太郎  名古屋大学, 地球水循環研究センター, 助教 (50335022)

キーワード水循環 / 大気現象 / エアロゾル
研究概要

エアロゾル輸送モデルSPRINTARSのソースコードを開発者である九州大学応用力学研究所竹村俊彦准教授より受領し、雲解像モデルCReSSとの結合モデルCReSS-SPRINTASの作成を行っている。SPRINTARSと同様にCReSS-SPRINTASでも、取り扱われる17種類のエアロゾルの種類と粒径毎に混合比を予報変数として計算する部分の作成を行った。そして、各種類のエアロゾル粒子に対して、大気の流れによる移動(移流・拡散)部分のコード化も完了した。
次いで、エアロゾル粒子の大気中での乾性沈着、雲・降水による湿性沈着、重力落下などの部分のコード化を行った。SPRINTARSは全球モデル用に開発されているため、降水粒子に取り込まれたエアロゾルが1タイムステップのうちに地上まで落下してしまうと規定されている。CReSS-SPRINTARSでは、雲・降水粒子に取り込まれたエアロゾル粒子は、雲・降水粒子とともに移流、拡散、落下する必要があるため、この過程を新たに設計し、コード化を行った。併せて、雲・降水粒子が蒸発した際のエアロゾル粒子の再放出部分の精緻化のコード化も行った。
そして、エアロゾル粒子が凝結核・氷晶核として雲粒の形成作用する過程の開発を現在行っている。この過程の開発に先立ち、CReSSに含まれる液相の凝結物(雲水、雨水)についてその混合比だけでなく数濃度の予報を行うダブルモーメントスキームのテストを行っている。理想的な条件下での降水セルや降水システムを対象とした数値実験を行い、ダブルモーメントスキームの不具合の検討・改修を進めている。同時に、エアロゾル粒子が凝結に生長する過程と凝結核から雲粒子への変換過程の設計を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

CReSS-SPRINTARSにおける雲・降水粒子に取り込まれたエアロゾル粒子の取り扱いの検討とCReSSのダブルモーメントスキームのテストに時間を要したために、モデル開発は予定よりも若干遅れ気味である。一方で、CReSS-SPRINTARSを用いた検証実験を行うケースを衛星データとの比較から抽出することができたなど、進んでいる部分もある。
来年度は本研究課題の最終年度である。モデル開発の上では、残る過程は凝結核・氷晶核の形成過程と雲粒子への変換過程である。この過程を早急に作成し、予定しているケースでの比較検証を行っていくつもりである。

今後の研究の推進方策

本研究の目的は、梅雨前線帯などの高湿潤域において発達する降水システムの構造や機構へのエアロゾル過程を導入した影響を見積ることである。この目的のために、エアロゾル過程を導入した雲解像モデルCReSS-SPRINTARSの開発を行っている。現時点までに、CReSS-SPRINTARSのうち移流、拡散、重力沈降、乾性・湿性沈着などの開発を終えており、凝結核・氷晶核の形成過程の組み込みを残す状態である。最終年度である本年度は、凝結核・氷晶核の形成過程と雲粒子への変換過程のコード化を行い、CReSS-SPRINTARSのプロトタイプを完成させる予定である。
そして、梅雨期の降水システムを対象としてエアロゾル過程を導入したモデル(CReSS-SPRINTARS)の結果と導入していないモデル(CReSS単体)の結果の比較を行う予定である。2010年梅雨期の台湾・沖縄周辺域を対象としてCReSSを用いたシミュレーション結果については、様々な人工衛星により取得されたデータとの比較を行うことで、雲物理量の検証をこれまでに行っている。検証結果のうち、いくつかの問題点についてはエアロゾル過程の導入により改善されることが見込まれると想定している。このため、同様の検証手法をエアロゾル過程を導入したモデルの結果に適用して、改善の有無の検討を行うつもりである。

次年度の研究費の使用計画

これまで、雲解像モデルCReSSのコードは中電CTIの榊原篤志氏とそのグループが作成している。榊原氏のグループは計算科学を修めたメンバーで構成されており、CReSSの特徴として可読性が高く実行速度が速いことが挙げられる。特に計算の実行速度の向上は、将
来構想にも入っているCReSS-SPRINTARSを用いた毎日のシミュレーション実験を行う際には欠かせない性能である。このため、CReSS-SPRINTARSの開発において、中電CTI関係者にプログラムコードの高速化のための改修を依頼する。そのための予算を「その他」の費目に計上する。
また、SPRINTARSの開発者である九州大学応用力学研究所の竹村俊彦准教授との打ち合わせを行う必要がある。このため名古屋-博多間の旅費を計上する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] 衛星データと衛星シミュレータSDSUにより示された雲解像モデルCReSSにおける雲氷の粒径に関する問題点2013

    • 著者名/発表者名
      篠田太郎・増永浩彦
    • 学会等名
      日本気象学会2013年度春季大会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20130515-20130518
  • [学会発表] Evaluation of Simulation Results of a Cloud-Resolving Model Using Satellite Data and a Satellite Simulator.2012

    • 著者名/発表者名
      Shinoda, T.
    • 学会等名
      International Symposium on Heavy Rainfall over East Asia: Observation and Modeling at Cloud-resolving Scale
    • 発表場所
      Jeju Island, Korea
    • 年月日
      20120906-20120907
    • 招待講演
  • [学会発表] Evaluation of Simulation Results of a Cloud-Resolving Model Using Satellite Data and a Satellite Simulator.2012

    • 著者名/発表者名
      Shinoda, T., H. Masunaga, M. K. Yamamoto, M. Kato, A. Higuchi, K. Tsuboki, and H. Uyeda
    • 学会等名
      16th International Conference on Clouds and Precipitation
    • 発表場所
      Leipzig, Germany
    • 年月日
      20120729-20120803

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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