研究課題/領域番号 |
23540512
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西 憲敬 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00222183)
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研究分担者 |
鈴木 順子 独立行政法人海洋研究開発機構, その他部局等, 研究員 (50512878)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 赤道波 / ケルビン波 / 熱帯大気 / 気象衛星 / 赤外線 / 雲活動 / 大循環 |
研究概要 |
[ケルビン波の上方伝播に伴う振幅の変化についての解析] ケルビン波成分に関する振幅変化の気候値についての定義を改訂し、定量的評価に足りる表現でケルビン波成分の経度・季節分布を表した。解析領域を下部対流圏まで拡張し、波源との関連において振幅分布を整理した。その結果、分布の多くは既存の知識で解釈できたと考えるが、西インド洋での振幅増大およびその鉛直パターンの説明がもっとも困難であることがはっきりした。[インド洋域での定在安定層と水蒸気量の関係に関する観測および解析] 熱帯インド洋で北半球夏季の対流圏上部に認められる定在的安定層について、本年度実施した集中観測のゾンデデータを用いて北半球秋季についての解析をおこなった。安定層は秋季にも見られ、ライダーで観測された巻雲の雲頂高度と対応があった。巻雲付近では、水蒸気は過飽和かつ混合比の小さい状態にあり、巻雲により脱水が生じていることが確認できた。対流圏上部の安定層が巻雲の出現高度を下げることを通して、脱水量の増大につながっていることが示唆される。[雲頂高度データベースを完成させ、それをもとに予備的な解析] 熱帯域雲頂高度データの品質確認を行い、京都大学生存圏データベースの一部として第1版を一般に公開した。20N-20SにおけるMTSAT衛星視野のほぼ全域を納める汎用的なデータベースで、研究から観測時のリアルタイムモニターまで広範に利用可能だと思われる。このデータを用いて各種熱帯擾乱の解析を行った。6-9km付近に雲頂をもつ比較的珍しい雲クラスターのライフサイクルをCloudSatデータと併せて解析した。また、3000kmにおよぶ熱帯収束帯域の雲域の同時南北分割について、力学的解釈に基づく解析を進行中であり、次年度の早い時期にまとまった成果が公表可能になる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大きく進んでいるテーマと、あまり進んでいないテーマの両方がある。雲頂推定データの整備は予想よりも進み、次年度に予定していた雲帯分割に踏み込んで解析が進んでいる。また、解析からのフィードバックによって、データセット改良へのアイデアが集積しており、次年度には第2版の改良版がリリース可能な見込みとなっている。ケルビン波の解析はそのものは順調ではあるが、本年度中の雑誌出版ができなかったことは予定外であった。COSMICデータを中心とするきわめて大量のデータ解析は、物品購入事情の問題などにより、ある程度意図的に次年度へと送っている。本年度に得られた観測データにもとづく事例解析で安定層に関する興味ある着眼点がいくつもみつかっており、次年度に予定しているCOSMICデータを主軸のひとつとする包括的な統計解析につなげられたと考える。数値実験は、実験設定の考察中に多くの問題が明らかになったために、実質的にあまり進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において、巻雲データベースを用いた雲活動を伴う上部対流圏擾乱の解析に、今後もはっきりとした進展が見込めそうな展開があったので、その内容を大きく重視した研究体制をとっていきたい。数値実験については、データ解析がさらに進展して実験すべき内容を明瞭にしてからのほうが成果が見込めると判断したので、そのかなりの部分を平成25年度へと持ち越すことを検討している。全体的にみて、次年度は、当初の計画よりもデータ解析に重きを置いた内容にする計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は一部配当が一時凍結されたこと、その直後にタイ洪水の影響からハードディスクが品薄およびそれに引き続く価格高騰にみまわれてその状態が年度末まで継続したことから、ハードディスクを中心とするストレージの大量購入を前提にした研究を次年度に回し、比較的既存資源で効率良くできるテーマを優先した。次年度は、この状態が解消するのを待って、初年度に予定していたディスク消費型のテーマにも取りかかることを予定している。その他については、当初予定からの大きな変更はない。
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