研究課題/領域番号 |
23540514
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山本 勝 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (10314551)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 金星大気 / 対流 / 波動 / 大気大循環 / 地球流体力学 |
研究概要 |
金星大気大循環モデリングの高度化に向けて,地表付近のマイクロスケール気象シミュレーションを行った.今年度は,Yamamoto (2011, Icarus) では検討されていない運動量輸送過程について詳しく調べた.特に,対流調節による運動量輸送の地表風速依存性を明らかにした.さらに,このマイクロスケールモデルを雲内の対流混合層に適用した.高度50-55 kmの初期温位減率をパラメーターとした対流調節実験では,混合層内で非常に大きな渦拡散係数値をもつが,初期温位減率にはあまり依存しない.この渦拡散係数値は,鉛直1次元放射対流平衡モデルで要求される値と同程度の大きさである.また,高度50 kmの熱フラックスをパラメーターとした対流混合実験で,雲層内の対流混合の発達やそれに伴う渦拡散係数を調べた. 次年度以降にマイクロスケール実験の結果をパラメタライズするためには,パラメタライズしたルーチンを組み込む先であるベースモデルの整備も不可欠である.そのために,さまざまな境界条件で金星中層大気大循環モデルの予備実験を行った.いくつかのケースでは,スーパーローテーション,Y字形雲模様,極渦が再現された(Yamamoto and Takahashi 2012, Icarus).熱潮汐波が存在する中で,惑星スケール波動が振幅変調することによってY字形の雲模様が維持される.高緯度ではPolar dipoleやCold collar に似た極渦構造が再現された.このように,ベースモデルである金星大循環モデルも徐々に整備されつつある.また,金星雲では乱流拡散と微物理過程を結合させる必要があるので,微物理過程(今年度は核形成・凝縮過程)ルーチンの整備も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の交付申請書に書かれているとおり,金星の地表付近と雲層のマイクロスケール気象シミュレーションを行い,その結果を解析した.これらのマイクロスケール実験と平行して「大循環モデル」や「エアロゾル輸送モデルの微物理過程」の整備を行った.これらの成果は,国内外の学会(EPSC-DPS Joint Meeting 2011, Nantes; IUGG 2011, Melbourne)や研究集会等(Hierarchical Self-Organization of Turbulence and Flows in Plasmas, Oceans and Atmospheres, 京都; 国立天文台研究集会「天文学を中心とした理工学における乱流研究」, 東京)で発表され,学術誌(Icarus 217, 702-713)にも掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
金星大気大循環モデルの高度化が目的なので,微細擾乱の数値実験と平行して,大循環モデルやエアロゾル輸送モデルの整備を行う必要がある.特に,乱流混合過程を結合させる大循環モデルや微物理モデルの予備実験を引き続き行う. 金星雲層のマイクロスケール実験結果を観測(ビーナスエクスプレス探査機やベガ気球)と比較し,「モデルの妥当性」や「微細擾乱のスーパーローテーションへの寄与」について検討する.今後,対流に加えて波の飽和についても検討しなければならない.
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次年度の研究費の使用計画 |
「金星雲内の混合層」や「重力波の飽和」を解明するには高解像度の数値実験が必要となり、大型計算機を用いるために計算機使用料が必要となる.また,地球流体力学の視点で「安定層に挟まれた混合層」や「安定成層への対流の貫入」が渦拡散過程にどのような影響を与えるのか?を明らかにするために,詳細なデータ解析をパソコンおよびサーバーで行う.これまで蓄積された大量のデータは大容量ハードディスクにバックアップしなければならない。 上記の成果を国内外の学会で発表するために旅費が必要となる。さらに、国際誌論文掲載料や英文校正費も必要となる。 23年度内に論文の投稿および発表が間に合わず、次年度に繰りこんだために、23年度繰越分は次年度の「論文投稿料」や「査読修正後の英文校正」に充てる予定である。
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