ブロッキングとは,対流圏中高緯度において巨大な高気圧(ブロッキング高気圧)が1週間以上にわたって持続する現象である。多くの研究にもかかわらず,そのメカニズムはなお明らかにされてこなかった。本研究は主として持続メカニズムを研究したものである。 我々は新しい持続メカニズムとして,ブロッキングによる低渦位(その源は移動性高気圧)の選択的吸収メカニズム(以下,SAM) を提案した。持続メカニズムを保存量の供給メカニズムとして捉え直すということである。保存量が外部から供給されて現象は持続することができる。ブロッキングは低渦位を持つ循環なので,保存量としては渦位(PV)が適切である。ブロッキングは高気圧性渦なので,移動性高気圧と同じ極性(低PV)を持っている。このような同じ極性の渦同士は基本的に引き合い,併合するという性質を持っている。したがって移動性高気圧がブロッキング周辺にあると,ブロッキングはそれを選択的に吸収し,ブロッキングは持続することができる。 この考えを踏まえ,SAMを2つの解析から正当化した。データ解析と数値実験である。両者とも予想通りの結果を与えた。これらの結果はSAMが一般的なブロッキング持続メカニズムであることを示すものである。このように,SAMはブロッキングの持続をきわめてうまく説明しており,これまでの研究とは一線を画す画期的な研究となった。なおこの研究により,共著者の山崎哲は2013年度日本気象学会山本・正野論文賞(若手研究者の優れた論文に対する賞)を受賞した。 さらにブロッキングに強く関係するテレコネクションの研究も進めた。テレコネクションパターンと移動性高低気圧,ジェット気流の3者の正のフィードバックまたはコンシステントな関係によって長く持続することがわかった。テレコネクションも多くの研究者が研究を進めている第一級の研究課題であり,重要な成果と言える。
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