研究課題
積雲が生成した大気境界層の成層を調べるために、海面からの熱供給、水平移流、大規模沈降流によって、平均的にはバランスする条件での境界層を数値モデルで再現し、そのときの物理過程を詳細に調べようとした。そのための設定として、これまでによく使ってきたRain in Cumulus over Ocean (略称RICO)と呼ばれる貿易風帯での観測実験での設定を使うことにした。これまでに行ってきた数値モデルの比較実験での設定は、多くの研究者が参加できるように、格子間隔が100m×100m×40mで、計算領域が格子数で水平128×128、鉛直100と、比較的小さな設定であったため、解析に使う24時間積分の最後の4時間の間でも平均場が大きな時間変化が示した。なるべく正確なバランスした条件を作成するため、領域を512×512と大きくし、積分時間も数日行って、よくバランスした状況を作りだし、その中での積雲対流の役割を調べようとした。ところが、そのような実験を行うと、2~3日経った段階で、それまで最初に急増し、その後、増加の割合が減少し、適当な値に収束しそうな時間変化を示していた平均運動エネルギーがそれまでの2倍近くに増え、その値の付近で収束するような変化を示した。対流パターンを見ると、平均運動エネルギーが急増する前は、全体の領域でランダムに対流が起きているような状態だったのが、平均運動エネルギーの急増後は、対流の組織化が起こり、スコールラインのような構造が現れていた。水平平均温位の鉛直分布や降水量にも大きな差が現れていた。外部条件が一定の場合でも、平均的にバランスした状態が複数あることがわかり、平衡した平均場での湿潤対流の役割を調べるためには、このような組織化が起こる場合と起こらない場合の条件を明らかにし、その2つの状態を区別して議論する必要があることが明らかになった。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件)
Annual Report of the Earth Simulator Center, April 2012-March 2013
巻: 11 ページ: 61-66
天気
巻: 60 ページ: 475-477