太陽の爆発現象から地球に向かって放出される太陽高エネルギー粒子(SEP)の影響は、最大規模のもので航空機パイロットの1年間の被ばく線量基準に達するおそれがあるため、宇宙天気予報でも最重要課題として知られている。本研究では、この航空機被ばく線量を定量的に予測することを目的として3年間研究を進めてきた。 より具体的には、以下に示す3段階のモデル計算を行ってきた。1.地球軌道へ飛来するSEPスペクトルの時間発展プロファイルをFocused Transport Equationの解から推定し、静止軌道衛星GOESのリアルタイム観測データを用いた補正をかける。2.磁気圏Tsyganenkoモデル磁場中のプロトン追跡を行い、任意の緯度経度における大気上端でのSEPスペクトルを得る。3.任意高度における被ばく線量を、任意のスペクトル形状に対応したモンテカルロ空気シャワーシミュレーションによって計算する。 上記の3段階連結モデルを用いて、過去に発生した最高エネルギーSEPイベントについて、地上の中性子モニター観測値との比較から定量的な検証を重ねることで、最高エネルギーSEPの宇宙天気予報システムWASAVIES (WArning System of AVIation Exposure to SEP) を開発した。最終年度となる平成25年度は、開発したWASAVIESに関する研究成果を複数の論文にまとめ、国内外の学会や国際会議で発表した。
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