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2011 年度 実施状況報告書

パンサラサ高緯度海域における中生代海洋プレート層序の構築とシリカオーシャンの解明

研究課題

研究課題/領域番号 23540528
研究機関宇都宮大学

研究代表者

相田 吉昭  宇都宮大学, 農学部, 教授 (90167768)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードニュージーランド / 三畳紀中期放散虫化石 / 高緯度海域 / コノドント化石 / 海洋底プレート層序 / チャート / 海綿骨針チャート / 炭酸マンガンノジュール
研究概要

ニュージーランドのオークランド周辺地域には,ワイパパ帯北部に属するP/T境界を含むペルム紀から三畳紀後期のより古い付加体と三畳紀後期からジュラ紀後期の若い付加体が隣接して分布していることは,これまでのワイヘケ島北西部やラキノ島の我々の研究から判明している.一方これら2島の西方に位置するモツタプ島はチャートを含む基盤岩からなるが,これまで詳しい地質学的調査はなされていなかった.本研究の初年度は,モツタプ島の西岸のアドミニストレーションベイにおいて,地質調査を2011年11月そして2012年2-3月に本調査を実施した結果,三畳紀のチャート,珪質泥岩,塊状砂岩からなる海洋底プレート層序が好露出しており,それらの層序断面から連続的な岩石試料を採取した.その岩相層序は,下位から黒色葉理チャート/黒色珪質頁岩互層(0.5m),緑灰色チャート(0.5m),緑色/紫色頁岩(1.5m),灰色チャートを上部に伴う赤色チャート(10.5m),赤紫色-緑色頁岩(7.5m),炭酸マンガンノジュールを伴う紫色頁岩(0.5m),紫色/緑色珪質頁岩(6.8m),赤紫/緑色頁岩 (13.5m),緑色等量互層頁岩(3m),黒色リン酸塩ノジュールを含む緑色泥岩(3m),塊状砂岩(5m+)に至る. 赤色チャート層からはコノドント化石Chiosella timorensisを産出することから,三畳紀中期のearly Anisianを示すことが明らかになった.また紫色頁岩に含まれる炭酸マンガンノジュールから保存良好な放散虫群集を産出し,ファンガロア地域のマヒネプア半島の緑色珪質泥岩から報告したlate Anisianを示す群集と似るが,より下位の層準から産出する群集により類似することが明らかになった.チャート層のSEM観察から,海綿骨針が密集する生物源チャートが多くの層準に含まれることが判明している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1. ニュージーランドにおけるP/T境界を含むペルム紀から三畳紀後期の層状チャートにおいては,コノドント化石と放散虫化石が共に保存状態が良好で連続して産出するようなセクションは皆無であることから,モツタプ島のチャート層は,放散虫,コノドント複合微化石層序を確立できる可能性を有している2. チャート層の上位に重なる紫色頁岩に含まれる炭酸マンガンノジュールは,三畳紀中期の late Anisian を示し世界的にも一番古い年代の炭酸マンガンノジュールである.保存良好で多数の放散虫化石の種数を含むこと,また南半球高緯度海域に生息していた Glomeropyle属を多数含むことから,高緯度海域の固有種とコスモポリタン種を区分することが可能となる.3. 2012年3月26-30日にスペインのカディスで開催された第13回INTERRADの化石及び現生放散虫に関する国際学会で初年度の成果発表講演を行い,かなりの注目と関心を得ている.

今後の研究の推進方策

1. モツタプ島の連続したチャート層について,岩石スラブと岩石薄片を作成して,岩相,色測定,堆積学的記載.SEM観察を行い,チャートを構成する生物源構成要素を解明して,チャートの堆積環境の変遷を明らかにする.2. 三畳紀初期から中期のチャート層の年代はコノドント化石層序に基づいて決定し,放散虫化石層序の構築を進めて行く.3. 三畳紀中期(late Anisian)の炭酸マンガンノジュールから産出する放散虫群集について,高精細SEMによる全種解析を行い電子画像データベースを作成する.それに基づいて高緯度海域にのみ産出する固有種と,テーチス海と共通するコスモポリタン種に区分する.このデータに基づいて中生代海洋環境における放散虫の緯度的多様性の変化を明らかにしていきたい.4. モツタプ島の連続したチャート層下部に含まれる黒色葉理チャートについて,岩石スラブおよび岩石薄片を作成してSEM観察と微生物の微化石の有無を解析して,その年代および起源を解明し,グローバルな海洋貧酸素事件(OAE)と関連するのかどうか明らかにしていく.

次年度の研究費の使用計画

1. 当初次年度に予定していた海外地質調査を初年度の最後の2012年2-3月に行い,計2回の海外調査を実施した結果,外国旅費の経費が当初より多く変動し,3月末の精算時に残余が生じた.これは次年度に学科長としての役務を行うため長期の海外出張が困難であることが予想されたため,研究に必要となる岩石試料を初年度に確保するために行ったものである.その結果として,チャート層や珪質泥岩層などの岩石試料を多数採取することができた.2. 次年度はこれらの岩石試料の室内分析に重点をおいて研究を進めて行く.3. 研究成果は順次,国内の日本古生物学会や日本地質学会等で公表する予定である.

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件)

  • [雑誌論文] Early Triassic (Induan) Radiolaria and carbon-isotope ratios of a deep-sea sequence from Waiheke Island, North Island, New Zealand2011

    • 著者名/発表者名
      Hori, R. S., Yamakita, S., Ikehara, M., Kodama, K., Aita, Y., Sakai, T., Takemura, A., Kamata, Y., Suzuki, N., Takahashi, S., Spörli, K.B., and Grant-Mackie, J.A
    • 雑誌名

      Palaeoworld

      巻: 20 ページ: 166-178

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Radiolaria: achievements and unresolved issues: taxonomy and cytology2011

    • 著者名/発表者名
      Noritoshi Suzuki and Yoshiaki Aita
    • 雑誌名

      Plankton & Benthos Research

      巻: 6 ページ: 69-91

    • 査読あり
  • [学会発表] An ocean plate stratigraphy and endemic radiolarian faunas in the Triassic and Jurassic sequences, Waipapa Terrane, New Zealand2012

    • 著者名/発表者名
      Yoshiaki Aita, Atsushi Takemura, Rie S. Hori, Satoshi Yamakita, Satoshi Takahashi, Hamish J. Campbell, and K. B. Sporli
    • 学会等名
      13th INTERRAD: A conference on Fossil and Recent Radiolarians
    • 発表場所
      スペイン Cadiz
    • 年月日
      2012年3月26日
  • [学会発表] Late Triassic (Norian-Rhaetian) radiolarians of deep-sea sedimentary rocks from the Waipapa terrane, New Zealand, and those of Japanese Islands2012

    • 著者名/発表者名
      Rie S. Hori, T. Ohshiro, Yoshiaki Aita, Toyosaburo Sakai, Atsushi Takemura, Kazuto Kodama, and K.B. Sporli
    • 学会等名
      13th INTERRAD: A conference on Fossil and Recent Radiolarians
    • 発表場所
      スペイン Cadiz
    • 年月日
      2012年3月26日
  • [学会発表] The Induan (Early Triassic radiolarian faunal transition above the P/T boundary at Arrow Rocks, New Zealand2012

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Takemura, Haruna Komori, Ryo Aono, Satoshi Yamakita, Yoshihito Kamata, Rie S. Hori, Yoshiaki Aita, K.B. Sporli and Hamish J. Campbell
    • 学会等名
      13th INTERRAD: A conference on Fossil and Recent Radiolarians
    • 発表場所
      スペイン Cadiz
    • 年月日
      2012年3月26日
  • [学会発表] Uppermost Permian to Lower Triassic ocean floor sequences in Japan and New Zealand, similarity of OAE-affected faunal transitn processes of radiolarian and conodonts after the end-Permian mass extinction2012

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Yamakita, Atsushi Takemura, Rie S. Hori, Yoshiaki Aita, Satoshi Takahashi, Satoru Kojima, Yoshihito Kamata, Noritoshi Suzuki, K.B. Sporli and Hamish J. Campbell
    • 学会等名
      13th INTERRAD: A conference on Fossil and Recent Radiolarians
    • 発表場所
      スペイン Cadiz
    • 年月日
      2012年3月26日
  • [学会発表] ニュージーランド北島モツタプ島のAdministration Bayにおける チャート層・珪質泥岩層から産出する放散虫化石(予察)2011

    • 著者名/発表者名
      相田吉昭・堀 利栄・山北 聡・高橋 聡・Chris Adams・Hamish Campbell
    • 学会等名
      2011年放散虫研究集会 (松山)
    • 発表場所
      愛媛大学理学部
    • 年月日
      2011年10月29日
  • [学会発表] 徳之島東方海域における現生放散虫の鉛直分布について2011

    • 著者名/発表者名
      佐々木晴香・相田吉昭・大塚 攻
    • 学会等名
      2011年放散虫研究集会 (松山)
    • 発表場所
      愛媛大学理学部
    • 年月日
      2011年10月29日
  • [学会発表] アリューシャン海域における水深0-150 mの現生放散虫について2011

    • 著者名/発表者名
      澤田香織・相田吉昭・鈴木紀毅・大金 薫・辻 彰洋
    • 学会等名
      2011年放散虫研究集会 (松山)
    • 発表場所
      愛媛大学理学部
    • 年月日
      2011年10月29日
  • [学会発表] ニュージーランド北島アローロックスにおける古生代/中生代境界直後の放散虫群集の変遷2011

    • 著者名/発表者名
      竹村厚司・小森はる奈・山北 聡・鎌田祥仁・相田吉昭・堀 利栄・高橋 聡・池田昌之・K.B. Sporli ・Hamish J. Campbell
    • 学会等名
      日本地質学会第118年学術大会 (水戸)
    • 発表場所
      茨城大学
    • 年月日
      2011年 9月11日

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公開日: 2013-07-10  

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