研究課題/領域番号 |
23540530
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
宮下 純夫 新潟大学, 自然科学系, その他 (60200169)
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キーワード | 海洋地殻 / オフィオライト / 海嶺 / オマーン / オフアクシス火成活動 / 海嶺セグメント |
研究概要 |
オマーンオフィオライト溶岩層に関する詳細な検討から,海嶺軸上での火成活動とオフアクシス火成活動が系統的に識別されることを明らかにした.また,溶岩層の海嶺軸方向に沿った岩相や組成の変化についての検討も着実に進行しつつある.溶岩層の垂直的な積み重なりが海嶺軸からオフアクシスへの空間的変化の中で形成されることを明らかにしたことは大きな成果である. 一方,オマーンオフィオライトのガブロ層中には大量のウエールライト~優黒質ガブロの貫入岩体がこれまで知られていたが,それらについての広域的変化などに関してはこれまで報告されていなかった.今回,南北80kmにわたる広範な地域でそうした後期貫入岩体を検討した結果,ガブロ層と類似したマグマから由来しているものと,ガブロ層とは著しく異なった島弧的マグマに由来する2つのタイプが識別された.前者は本研究目的に掲げたオフアクシス火成活動に由来するものとみなされるが,後者は,初期島弧形成時に活動したマグマから由来していると考えられる.オフアクシス火成活動の深部相とみられるウエールライト~優黒質ガブロの貫入岩体は,場所により著しい岩相の変化を示すが,特に 海嶺セグメント末端部と見なされる両端部の地域のものは,大量の角閃石の出現や,全般的により分化した組成によって特徴づけられる事が明らかになってきた.一方,海嶺セグメント中心部付近では,角閃石の産出頻度は低く,組成ももっとも未分化であることが明らかになってきた.すなわち,海嶺セグメント構造は海嶺軸における海洋地殻形成をコントロールしているばかりでなく,オフアクシス火成活動にも大きな影響を与えていることが明らかになってきた.このことは,海嶺セグメントの大きな不連続に沿って,海水が深部まで浸透している可能性を示している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
溶岩層からの解析は順調に進行しており,精密な調査と地球化学的研究との結合により,軸上火成活動からオフアクシス火成活動への溶岩層の形成プロセスが明確になった.したがって,計画で掲げた研究目標を達成するとともに,その成果は国際誌へ投稿され,既に公表されている. オマーンオフィオライトにおいては,溶岩層序が研究者によって異なり,大きな混乱が生じていたが,精密な地質学的・層序学的研究と地球化学的研究を融合することにより,その混乱を解決できる展望が明らかになってきた.この溶岩層に関する研究は,今後,オマーンオフィオライト研究や海洋地殻溶岩層の研究の重要なレファレンスになるものと思われる.この結果も既に国際誌へ投稿してある. 一方,地殻の深部に貫入しているいわゆるウエールライト貫入岩体については,オフアクシス火成活動,すなわち広義の海嶺火成活動によるという考えと,海洋底衝上断層の発生に伴う初期島弧火成活動によっているという2つの考えが提案されているが,最近は後者の考えを主張する研究者が多い.この間の研究により,ウエールライト~メラガブロ貫入岩体には,明確に岩石学的特徴が異なる2つのタイプが存在していること,一つは頻繁に出現する通常のタイプで,単斜輝石集積岩から主になり角閃石を大量に伴う島弧的性格を有しているものとは明瞭に区別されることが明らかになってきた. さらに,前者のものにはセグメント構造との関係で系統的な岩相・組成変化を示すことが明瞭になってきた.ウエールライト~メラガブロ貫入岩体がセグメント構造に支配されていることが明らかになったのは初めてであり,その成因についても重要な制約条件を与えるものである.この成果の一部は現在国際誌へ投稿中であり,受理を待っている状況にある. 以上のことから,研究目的に沿った成果が当初の計画以上に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
溶岩層に関しては,火山岩層序の広域的変化という視点で補足的な調査を行い,オマーンオフィオライトにおける溶岩層序を確立して,論文作成に取りかかる.ウエールライト~メラガブロ貫入岩体に関しては,V2深部相のウエールライト~単斜輝石集積岩などとの区別を明確にするために,LA-ICP-MSを用いた精密な地球化学的分析を行い,これまでの記載岩石学的結果や鉱物組成分析結果を会わせて論文作成を行う.昨年計画した2本の論文のうち,新たに発見された巨大ウエールライト岩体の記載とその成因に関してはすでに投稿したので,広域的なウエールライト~メラガブロ貫入岩体の変化の実体解明とその成因的意義を示す論文作成に取り組む. 溶岩層におけるオフアクシス火成活動のマグマと,ウエールライト~メラガブロとの成因的関係は,共通して観察される単斜輝石や斜長石の微量成分組成分析から検討を開始する.
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次年度の研究費の使用計画 |
オマーンオフィオライト調査のための旅費,国内外での学会での成果発表のための旅費として合わせて70万円を予定している. 精密化学分析のためのガス代や薬品代として5万円を計上している. その他として,岩石運送費や論文投稿料,別刷り代として30万円を予定している. なお,今年度未使用金が30万円弱生じているが,受理が間近い論文だけで30万円近い費用が発生することが分かっており,残金として残したのはそのためである.
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