研究課題
オマーンオフィオライトは高速拡大海嶺で形成された海洋リソスフェアとみなされ,その世界的典型として海嶺下での地殻形成プロセスなどについて多数の研究がなされている.本研究では,同オマーンオフィオライトにおいてオフアクシス火成活動による海洋地殻形成の意義について,地殻深部(ガブロ層)と上部(溶岩層)とにおいて検討した.その結果,溶岩層の岩相は,下位から上位へ向かって系統的な変化を示すことや,その変化と対応した溶岩の組成変化が明らかとなった.シート状岩脈群の直上に出現する溶岩層は,海嶺頂部付近の緩やかな斜面を反映して塊状溶岩やロベートシートフローなどの岩相が卓越すること,溶岩層中間部では,海嶺翼部へ向かって傾斜が急となる事を反映して枕状溶岩の出現頻度が著しく上がるが,その上位では深海平原の傾斜が緩くなる事を反映して,再び塊状溶岩やロベートシートフローが卓越していく事が明らかになった.溶岩層の上位へ向かった岩相変化は,海嶺軸上で形成されたものから,海嶺直上から翼部への空間変化を示している事となる.一方,オマーンオフィオライトにはウエールライト貫入岩体がガブロ層を中心に多数分布しているが,その成因を巡っては,オフアクシス火成活動によるという考えと,沈み込み帯形成時の後期貫入岩体であるという二つの意見が対立してきた.本研究では,オフアクシス火成活動によるものが多くを占めるが,一部にはそれと成因のことなる後期火成活動によるものがあり,明確に区別される事を明らかにした.本研究では,オフアクシス火成活動による巨大岩体を新たに発見するとともに,その成因について検討した.以上の結果,高速拡大海嶺における海洋地殻の付加プロセスにおいて,オフアクシス火成活動による付加が,地殻深部でもまた地殻上部でも大きな役割を果たしている事が明らかとなった.
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Geol. Soc. London, Special Pub.
巻: 392 ページ: 205-220
10.1144/SP392.11
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月刊地球号外
巻: 64 ページ: 74-80