研究概要 |
平成23年度には,三重県多気郡大台町池ノ谷,薗川流域および同県熊野市ツエノ峰地域にあるせき止め湖埋積堆積物をボーリング掘削する予定であったが, 9月上旬の台風12号および15号災害により,同上地域へのアクセス林道が大きな被害を受け掘削が不可能となった.このため,次のような研究を行った. 産業技術総合研究所により池ノ谷流域で掘削されたボーリング試料を用い,走査型X線分析顕微鏡による元素マッピングを行った.その結果,肉眼的に確認できる明暗および粗粒・細粒の縞に対応して,Al, Si, S, K, Caなどの元素が増減すること,その変動は構成粒子である砕屑粒子,有機物片,珪藻化石,粘土鉱物などの増減に支配されていることが明らかとなった. 台風被害のなかった岐阜・福井県境の冠山地域において,地すべりの前兆現象と考えられる山体重力変形地形の形成過程の検討を行った.二重稜線の間の凹地を埋める堆積物をハンドオーガーボーリングにより掘削した結果,(1)凹地埋積堆積物は地すべりの移動方向に向かい薄くなる非対称な層厚分布をもつこと,(2)下部に鬼界アカホヤ火山灰(K-Ah, 7.3 ka)を挟むこと,(3)深度82 cm, 138 cm, 195 cmからは木片が得られ,そのAMS 14C年代は,それぞれ1210+-25 BP (1234-1060 cal BP), 5320+-30 BP (6191-5996 cal BP), 6990+-30 BP (7931-7731 cal BP)であることが明らかとなった.これらの年代値から,凹地埋積堆積物の平均堆積速度は約0.25 mm/年となる. 平成24年3月には,ツエノ峰地域で二重山稜の間の凹地を埋める堆積物のボーリング掘削を行った.平成24年度にはこの試料の解析を行う予定である.
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