研究課題/領域番号 |
23540535
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
臼井 朗 高知大学, 教育研究部自然科学系, 教授 (20356570)
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研究分担者 |
高橋 嘉夫 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10304396)
伊藤 孝 茨城大学, 教育学部, 教授 (10272098)
鈴木 勝彦 独立行政法人海洋研究開発機構, その他部局等, その他 (70251329)
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キーワード | マンガンクラスト / 年代測定 / 希土類元素 / 微細層序学 / 成長速度 / 資源 / 濃集 |
研究概要 |
平成24年度は研究分担者3名はじめ,連携研究者とともに,海底マンガンクラストを対象として,実海域での現場観測,試料採取の実施,採集したサンプルを中心とした各種の分析を行った.海底探査ロボットを用いた海底探査航海(全国公募による競争的研究航海)に応募して4件中,3件が採択され,3航海(うち2回は首席)の航海を実施した.モデル海域として,北西太平洋海盆(拓洋第5海山)と四国海盆(流星海山)を集中的に調査することが出来た.試料は非擾乱,非破壊という条件を満たす良質なものであり,詳細な組成プロファイルに基づく微細層序の検討に最適であった.同時に層序に年代軸を入れる努力を続け,放射性同位体,安定同位体,残留磁化を用いて,独立に年代分析を実施することが出来た.その結果複合年代測定法の一つの成功例を呈示することが出来た. 他には,微量元素(希土類,白金族)のパタン解析やフラックス算定に基づき,北西太平洋における新生代の鉄・マンガン酸化物資源形成の概要を浮き彫りにした.少なくとも1200万年あるいはそれ以上古い時期から,現在まで,約1000mから超6000mのあらゆる水深帯において,酸化物物の沈殿が継続してきたという事実が明らかになりつつある. 研究の実績,成果の一部は,各種の学会,シンポジウム(海外開催も含む),および海洋研究開発機構のクルーズレポートなどに逐次公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は4機関,4名の研究者の共同研究として開始した。研究の場としては競争的研究航海の獲得を目指し,予定を大きく上まわる航海のチャンスを獲得した。研究機関や大学の研究者20余名を核とした,自主的研究グループを設立し,これまでに2回の研究会を開催した。この研究グループは,我が国随一と自負している。2013年5月に開催される,我が国最大の地球科学系研究集会である地球惑星科学連合大会において,我々の独自のセッション「海底マンガン鉱床の生成と環境」を立ち上げた。 我々の研究成果は学会だけではなく,国際的,あるいは政策分野にも貢献をしている。例えば,我が国のマンガンクラスト鉱区申請(国連・国際海底機構)に活かされ,研究成果は多くの国際研究集会や国際学術誌などに公表されている。 内外の人的ネットワークも新たに構築され,一部は,海洋研究開発機構,石油天然ガス・金属資源機構,産業技術総合研究所などとの共同研究を実現した。 以上のことから,小さな研究予算でありながら,非常に大きな展開が進んでおり,これは予定外の大きな成果ということが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
過去2年を振り返り,さらに次世代に向けて,深海底の鉱床地質学とでも言うべき新たな分野を拡げるべく,総合的な共同作業,共同研究を継続する。 マンガンクラストを海洋コアとみなすという斬新なアイデアを実証すべく,鉱物学,地質学,化学,物理学,古生物学,微生物学等の多角的研究を進化させたい。 最終年度に当たっては,成果蓄積と同時に,研究発表が重要であるから,成果発信に努力する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,研究交流,海外での研究成果発表,船上や陸上での調査,我が国では難しい大型質量分析機を用いた年代測定,などを積極的に試みる。 関連して,研究費は外注分析費,海外渡航旅費,招聘旅費などへの支出を予定している。
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